2017年

12月

10日

日米の居住者に係る外国税額控除

 日本の居住者は、所得の生じた場所が国内であるか、国外であるかを問わず全ての所得について日本で課税されますが、外国で生じた所得について外国の法令で所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)の課税対象とされる場合、日本及び外国の双方で二重に所得税が課税されることになります。
 この国際的な二重課税を調整するために、居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税の額をその納付することとなる年分の所得税の額から差し引くことができます。これを「居住者に係る外国税額控除」といいます。

 居住者に係る外国税額控除は、米国所得税を納付することとなる日の属する年分において、日本の税法において課されるべき所得税額について、その年分の所得総額に対する調整国外所得金額に対応する部分の金額を限度として居住者に係る外国税額控除を認めるものです。

 しかしながら、国外源泉所得が生じた年とその国外源泉所得に係る外国所得税を納付することとなる年が常に一致するとは限りません。このように、国外源泉所得の発生年と外国所得税の納付年とにずれが生じ得ることを踏まえ、控除対象外国所得税の額と所得税の控除限度額との差額のうち一定額を翌年以降3年間繰り越すことのできる外国税額控除の繰越控除が設けられています。

 これに対して、米国では、外国税額控除(Foreign Tax Credit) は、1年間の繰り戻し(Carry back)と10年間の繰り越し(Carry over)ができます。繰り戻しとは、その年に使えなかった外国での税金(Unused Foreign Tax)をあたかもそれ以前の年に払ったかのように扱うことです。また、使えなかったクレジットは繰り越すこともできます。

 繰り戻しと繰り越しは、最初に繰り戻しを計算し、繰り戻しが可能ならそちらを先に使います。繰り戻しができなかったり、繰り戻ししてもまだ使っていないクレジットが残る場合、それ以降の年に繰り越していきます。

 Foreign Tax Credit の申請には 原則として、Form 1116 の提出が必要です。また、繰り戻しの場合には、過去に遡るのでForm 1040Xによる修正申告(Amended Tax Return)が必要になります。

 このように、外国税額控除は日本では繰越控除しかできないのに対して、米国では繰戻控除が認められており、二重課税の解消の程度が高くなっています。

2017年

11月

10日

米国の州政府の所得税について

 米国では、連邦政府と州政府の二つの政府が存在するために、所得税も、連邦政府と州政府へ別々に申告納付する義務があります。これは、個人でも法人でも同じことです。米国の居住者は、全ての総所得から、種々の控除を差し引いた課税所得に対する税金を連邦政府(IRS)に納付する義務があります。また、州政府にはその州で発生した所得に対して、州所得税を納付する義務があります。

 現在、個人所得税納付の義務がない州は、アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコダ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7つの州となっています。また、ニューハンプシャーとテネシーの2州では、投資所得(例えばキャピタル・ゲイン)だけが課税対象になっています。その他の州は州所得税を申告納付する義務があります。

 すべての所得には、当事者の居住地に関係なく連邦所得税が課せられます。州所得税がない州に居住していても同様です。州所得税や地方自治体所得税については、それぞれの税制によります。

 一方、勤務州と居住州が異なる場合の所得税は、当事者本人が「居住者」であるか「非居住者」であるかを州財務省に申告する必要があります。

 例えば、勤務地がニューヨーク州で居住地がニュージャージー州の場合、勤務地に対しては「非居住者」として給与所得を課税対象所得として申告し、居住州に対しては「居住者」として申告します。その際、居住州には、内国歳入庁(IRS)に申告した所得額を報告し、それと同時に、勤務州で納税した額を「他州税額控除」として申告することで控除を受けることになります。

2017年

10月

10日

米国不動産を売却した場合のふるさと納税

 日本の居住者が米国の不動産を売却した場合には、全世界課税が行われ、国内法に基づいて譲渡所得が発生することになります。納税者が総合課税の給与所得と分譲課税の譲渡渡所得の両方の所得がある場合には、ふるさと納税の上限額はそれぞれの所得に基づいて計算されることになります。

 ふるさと納税を行うと、寄附金のうち2千円を超える部分は、一定の上限まで、原則として所得税・個人住民税から全額が控除されますが、寄付金の全額が控除されるわけではなく限度額があり、また、そもそも控除されるだけの所得税や住民税が発生していなければなりません。

 ふるさと納税の控除額は、以下のように計算されます。なお、平成49年までの所得に係る所得税率は、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加算した率となります。

➀所得税寄附金控除(所得控除)

(寄附金-2千円)を所得控除 →(控除額×所得税率 × 1.021)が軽減 ※1

➁住民税基本控除(税額控除)

(寄附金-2千円)× 10% ※2

➂住民税特例控除(税額控除)

(寄附金-2千円)×(90%-所得税率 × 1.021) ※3

 

※1 ➀の所得税寄附金控除の控除対象寄付金は総所得金額等の40%が限度です。
※2 ➁の住民税基本控除の控除対象寄附金は総所得金額等の30%が限度です。
※3 ➂の住民税特例控除は、住民税所得割額の20%が限度です。

 

 上記のとおり、➂の住民税特例控除額は、個人住民税所得割額の2割が限度となっているので、「➂住民税特例控除額 = 個人住民税所得割額 × 20%」のとき、2千円を超える部分が全額控除となる寄附金の限度額となります。

 寄附金限度額をXとすると、次の計算式が成り立ちます。
➃(X-2千円)×(90%-所得税率×1.021)= 個人住民税所得割額 × 20%
 これを展開すると、次の計算式により、寄附金限度額を求めることができます。
➄X= 個人住民税所得割額 × 20% ÷(90%-所得税率×1.021)+2千円


 上記の➄の計算式のとおり、寄附金限度額Xは、所得税率と個人住民税所得割額によって決まります。
 所得税の税率は、課税所得の増加に応じて高くなるように設定されており、その納税者に適用される税率を用います。申告分離課税を合わせて課税される場合も総合課税の税率によります。

 以上のように、日本の居住者が米国の不動産を売却した場合には、日本で譲渡所得が発生し、譲渡所得の住民税額も発生するため、ふるさと納税の限度額は給与所得のみの場合と比較して、増加することになります。

2017年

9月

10日

日本の居住者の住民税について

 住民税は、1月1日現在に住所のある市区町村において、前年中の所得に対して計算される税金です。

 平成30年度の住民税は、平成29年1月1日から平成29年12月31日までの所得の合計金額について、平成30年1月1日に住所がある市区町村で計算されます。また、住民税は、毎年5月中旬から6月上旬に通知され、翌年5月までを納期として納めることになります。この場合、平成30年6月から平成31年5月までの一年間で「平成30年度」の住民税を納めることになります。
 ところで、住民税には居住地異動に伴う月割り制度がありません。つまり、住民税を計算する1月1日現在の住所がある市区町村で1年分の課税がされ、納付義務が生じます。
 なお、住民税については、地方税法という法律により、全国一律の手続きによって課税がされますので、この扱いが市区町村によって変わることもありません。

 住民税は、1月1日現在の住所がある市区町村において、前年中の所得に対して1年分の税金が計算されます。年度途中に海外転出される場合でも、1月1日に日本国内の居住の事実がある限り、その年度の住民税は、納めなければなりません。1月2日以降転出された方の場合は、現時点で課税されている年度の住民税に加え、次年度の住民税も計算の対象となりますので、注意が必要です。
 たとえば、平成30年3月に国外転出された方については、その時点で納付の対象となっている平成29年度住民税とともに、平成30年1月1日に日本国内に居住していたことに対して計算される、平成30年度住民税も納める必要があります。

 住民税は、賦課期日に市区町村に住民登録がある場合は「生活の本拠」を置いている住所地が市区町村とみなされ課税されます。 海外赴任や海外留学等で出国(転出)し、賦課期日をまたいで、概ね1年以上海外で居住する場合は、日本国内に住所を有しないものとして取り扱われることとなり課税されません。
 しかし、出国の期間・目的・出国中の居住の状況等から原則として国内に住所がある(居住者)と判断された場合は、出国中であっても出国(転出)前の市区町村に住所があるものとみなされ課税されます。
 なお、一般的に、一時的に日本に滞在する外国人等の課税関係には、日本が各国と締結している租税条約の規定が適用されますが、各租税条約には対象税目が規定されており、この対象税目に住民税を含むものと含まないものがあります。

 例えば、米国から来日し一時的に滞在する場合には、日米条約の適用を検討することになりますが、日米租税条約では、日本では所得税、米国では連邦所得税のみが対象税目とされているため、国内法に従い住民税が課税されることになります。

2017年

8月

10日

日米の減価償却の違いについて

 米国では、税務上、減価償却方法として修正加速原価回収法(MACRS)が使用されており、動産については6種類、不動産については2種類に分類されています。動産には加速償却法が用いられていますが、不動産については定額法が用いられています。

 米国で生じた不動産賃貸所得であっても、グリーンカード保持の有無にかかわらず、日本の居住者であれば、不動産所得として日本でも申告義務が生じます。その際、賃貸にかかる経費は米国と同じですが、減価償却方法が日米で異なります。米国では売却損でも日本では売却益が算出されるということもあり得るかもしれません。つまり、米国では税金は発生しないけれども、日本では税金が発生する事態となるわけです。
 減価償却に関しては、それぞれの国の税法が適用されるため、同一の不動産にもかかわらず日米で減価償却の耐用年数が異なり、減価償却費も異なることになり、結果的に損益も違ってきます。
 米国では、MACRSの分類に基づいて、居住用賃貸不動産の減価償却の耐用年数は、建築構造の区別なく一律27.5年又は39年と定められていますが、日本では木造か鉄骨鉄筋かなど建築構造によって異なり、19~47年の耐用年数を使用します。
 また、米国では新築か中古かの区別はありませんが、日本には「中古」資産という概念があり、短縮された耐用年数を適用することが可能となります。
 さらに、米国では日本と異なり、土地よりも建物の資産評価額が高い傾向にありますので、より多くの減価償却費が生じることになります。
 例えば、米国で長期賃貸の場合、減価償却の耐用年数は27.5年ですが、日本では鉄筋コンクリート造は47年ですので、高額物件の場合は減価償却費の差は大きく、米国では損失でも日本では利益ということがあります。
 逆に、中古物件の場合は、日本では耐用年数の短縮が適用できますので、米国は利益でも日本では損失というケースも見受けられます。
 その結果、純損失の場合、米国では受動的損失制限(Passive Loss Limitation)により、原則として給与や利子・配当など他の所得との損益通算が制限されますが、日本では、米国と異なり、不動産所得においては損失を他の所得と通算して課税所得を計算する損益通算が認められています
 こうした日米での減価償却の違いを利用して節税する方法として、米国で木造のアパートやコンドミニアムを購入し、日本でそれを短期間で減価償却する方法があげられます。
 つまり、木造物件を米国で購入し賃貸に出す場合、日本では木造住宅の法定耐用年数は一般に22年ですが、法定耐用年数の全部を経過した場合は、22年×20%の4年間(1年未満の端数切捨)と耐用年数が短縮され、短期間で多額の減価償却費を控除することが可能となります。ちなみに、日本ではその賃貸損失を、個人で3年間、法人では9年間、繰越ができます。
 鉄骨鉄筋でも同じことが言え、日本での法定耐用年数は通常47年ですから、仮に47年以上経過している場合には、47年×20%=9年間(1年未満の端数切捨)と耐用年数が短縮され、同様のことが可能になります。
 なお、法定耐用年数の一部を経過した場合でも、経過年数を引いた上で経過年数×20%を足して算定するので、耐用年数は短縮できることになります。

2017年

7月

10日

米国非居住者の確定申告について

 米国の永住権(Green card test)又は市民権を所持している人は、米国での居住・非居住や米国源泉所得の有無にかかわらず、日本の所得を含む全世界所得を米国で申告する義務があります。この場合、日本で働いていても、米国の税務申告上は米国居住者(Resident)となり、確定申告のForm1040NRではなく1040で申告することになります。

 日本の居住者であれば、日本で所得を申告することになりますが、米国でも日本の所得を含む全世界所得を申告することになるため、結果的には、日本の所得が両国で課税対象となります。このような同じ所得に対する二重課税を回避するために、米国国外所得の非課税措置と外国税額控除があります。

 年間を通じて常に米国国外(日本)に居住している場合(Bona Fide Resident Test)、又は連続する12か月間において米国国外(日本)に330日以上滞在している場合(Physical Presence Test)には、米国国外(日本)で得た給与所得や事業所得等の勤労所得(Foreign Earned Income)につき$102,100(2017年度)を限度として総所得から除外(非課税)することが認められています。 

 例えば、現在日本で5,000,000円の給料を稼いでいる場合、上記の要件を満たせば、米国の税務申告はするけれども税金自体は発生しないことになります。その際、日本で発生した所得を申請(Form 2555)する必要があります。

 また、二重課税の問題を回避するために、米国国外(日本)での税金を米国の税務申告上控除対象とする外国税額控除(Form 1116という制度があります。同様の制度は日本にも存在します。

 米国国外所得の非課税措置と外国税額控除は、いずれか一方を適用することも、両者を併用することも可能です。併用する場合には、$102,100以下の所得については非課税措置を、それを超える所得に対して外国税額控除を適用することになります。

 これらの制度を適用するためには、確定申告書を提出するだけではなく、それぞれに適用される様式(Form)を添付することが条件となっています。

 

 これに対して、米国の非居住者は、米国での源泉所得の内で、米国関連所得(”Effectively connected U.S. Source Income”)についてのみ課税の対象となります。

 この米国関連所得とは、米国での給与所得や事業所得などの役務の提供の対価として発生した所得や、米国の不動産の売買や賃貸により発生した所得のことであり、所得が発生した翌年の4月15日までに、1040NRというフォームを使い所得税の申告をする必要があります。

 

 これらの申告が必要な所得以外は、非米国関連所得(Non-effectively connected U.S Source Income)とされ、源泉徴収の対象となります。非米国関連所得はこの源泉徴収税により課税が完結するので税務申告をする必要はありません。

 この非米国関連所得とは、米国内の金融機関などから受け取る利息、米国会社からの配当、特許や著作権のライセンス料などが含まれます。この源泉徴収方式には、通常、W-8というフォームを使用して行います。

 また、税務申告に際しては、居住者でも非居住者でもSocial Security Number (S.S.N)が必要ですが、現在SSNは労働ビサを所持している人にしか発行されていませんので、米国歳入庁から納税者番号(Tax ID)を取得する必要があります

 

2017年

6月

10日

米国公認会計士(US CPA)について

 米国公認会計士は、米国各州が認定する公認会計士資格であり、日本においては一般的にUS CPA(Certified Public Accountant)と呼ばれています。日本の公認会計士の多くが大手監査法人(Big4)での監査業務を中心に活動していますが、米国では大企業や政府に所属して会計・財務・経営計画などの中核メンバーとして働いている者の割合が高いです。会計事務所で監査業務等に従事する者だけではなく、事業会社や官公庁の経営職として最高財務責任者(CFO)、さらには最高経営責任者(CEO)といったポストに就く者も多くいます。

 なお、大手監査法人(Big4)とは、Deloitte Touche Tohmatsu、Ernst & Young、PriceWaterhouse Coopers、KPMG の4大会計事務所を指します。

 US CPAの受験には各受験州で個別に決められた会計及びビジネス関連科目の所要単位数が大学で取得または取得見込みであることが必要とされ、それぞれの有効単位数の認定は各州で行なわれます。試験はコンピュータベースで実施されており、受験者がプロメトリック・テストセンターへ受験を予約する必要があります。すべて英語で行われる試験のため、英語の読み書きができなければ取得は困難です。

 THE NASBA REPORTによれば、米国人を除く2014年の受験者数は、日本人が最も多いのですが、平均科目合格率は32.8%となっています。〔表1〕

 試験問題、採点、合格基準は全米で統一されており、各科目75点以上で合格とされています。試験科目は、FAR*、AUD*、REG*、BEC*の4科目ですが、有効期限を各科目18ヶ月とする科目合格制を採用しています。

 コンピュータ試験であるため、短答式と論文式からなる日本の公認会計士試験と単純比較はできませんが、FAR=財務会計論、AUD=監査論、REG=租税法+企業法+民法、BEC=管理会計論+経営学+経済学+統計学といったところではないでしょうか。

Financial Accounting & Reporting(企業財務会計及び公会計)

Auditing & Attestation(監査及びアテステーション)

Regulation(法規)

Business Environment & Concepts(ビジネス環境及び概念)

 

 米国公認会計士は以下の分野での役割を担うことが求められています。

・外資系企業やグローバルに活動を展開する企業における海外進出や合併、再編など、米国

 の会計基準を使用するケース

・米国企業の対日投資及び日本進出に伴う二国間にまたがる会計コンサルティング業務

・監査法人、会計事務所、一般企業における国際会計基準関連業務や国際税務業務

 

〔表1〕THE NASBA REPORT

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2017年

5月

10日

米国の居住者と非居住者の判定

 日本と同様に、米国居住者と米国非居住者では、課税される所得と課税の方法が異なります。したがって、最初に米国居住者か米国非居住者かを決定することが重要です。

 米国税法では、その国籍により個人を「米国市民」(U.S. citizen)と「外国人」(Alien)に区分し、さらに、その居住形態により「外国人」を「米国居住者」(Resident Alien)と「米国非居住者」(Non-resident Alien)に区分しています。

(1)「米国市民」に対しては、市民権課税が行われます。その居住地にかかわらず、すべての所得に対して課税されることになります。これは、全世界課税と呼ばれています。

(2)「米国居住者」も、米国市民と同様に、国外源泉所得も含めて全世界において取得したすべての所得に課税されることになります。

(3)「米国非居住者」は、国内(米国)源泉所得のみが課税の対象とされます。この場合、所得の種類により課税方法が異なります。また、租税条約等により税の軽減又は免除の規定が適用される場合があります。

 

・米国居住者の定義

 次のグリーンカード・テスト、又は、米国実質滞在テストの条件に該当する場合、外国人(Alien)は米国居住者として取扱われます。

(1)グリーンカード・テスト(Green card test

 米国永住権(グリーンカード)を有している外国人

(2)米国実質滞在テスト(Substantial Presence test

 次の米国実質滞在テストの条件を満たす外国人

 a.その年の米国滞在日数が31日以上で、かつ

 b.その年の米国滞在日数、前年の米国滞在日数の1/3の日数、および、前々年の米国滞在日数の1/6の日数の3年間の合計日数が183日以上

 

 なお、日数計算は、一般的に米国入国日と米国出国日もそれぞれ米国滞在1日として取扱います。そして、その滞在日数を1/3、又は、1/6にした場合に端数が出る場合、出た端数を合計して1日に満たない場合は切捨てます。また、米国滞在中の疾病のために出国帰国できない場合の日数や、カナダおよびメキシコからの通勤の日数等は、米国実質滞在テストの米国滞在日には含まれません。

 

・双方居住者であるケース(日米租税条約)

 日本と米国のそれぞれの国内法により、個人が双方居住者に該当するケースがでてきます。そのような場合には、「日米租税条約」(所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約)が適用されることになります。

 米国で市民権を有する者が、日本に3年間居住した場合には、いわゆる「双方居住者」に該当しますが、この場合の取扱は日米租税条約第4条2で次のように規定されています。

 

2 1の規定にかかわらず、合衆国の市民又は合衆国の法令に基づいて合衆国における永住を適法に認められた外国人である個人は、次の(a)から(c) までに掲げる要件を満たす場合に限り、合衆国の居住者とされる。

(a) 当該個人が、1の規定により日本国の居住者に該当する者でないこと。

(b) 当該個人が、合衆国内に実質的に所在し、又は恒久的住居若しくは常用の住居を有すること。

(c) 当該個人が、日本国と合衆国以外の国との間の二重課税の回避のための条約又は協定の適用上当該合衆国以外の国の居住者とされる者でないこと。

 

 したがって、国内勤務のため1年以上日本に滞在することが明確であることからこの米国市民権を有する者は日本の居住者に該当し、双方居住者の上記振り分け規定により日本で課税されることになります。

 

 また、米国市民権を有しない場合の双方居住者の振り分け規定は第4条3で次のように規定されています。

 

3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人(2の規定の対象となる合衆国の市民又は外国人である個人を除く。)については、次のとおりその地位を決定する。

(a) 当該個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある締約国)の居住者とみなす。

 

(b) その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。

 

(c) その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、当該個人が国民である締約国の居住者とみなす。

 

(d) 当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。

2017年

4月

10日

居住者・非居住者の判定(所得税)

 所得税法上、「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。居住者(非永住者を除く)は、所得が生じた場所が国の内外を問わず、その所得について日本において所得税を納める義務があります。

 なお、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である人を「非永住者」といいます。

 非永住者は、国内において生じた所得(国内源泉所得)とこれ以外の所得(国外源泉所得(例えば、国外で支払われる預金等の利子や、国外にある不動産の貸付・譲渡による収益、国外の法人等に対する出資に係る収益など))で日本で支払われたもの又は国外から送金されたもの(海外から日本の口座に振込まれたもので、海外の口座に振込まれたものは除かれる)ついて日本において所得税を納める義務があります。

 また、「非居住者」とは、居住者以外の個人をいい、(国内源泉所得)に限って所得税を納める義務があります。

 ここで、「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかは、客観的事実によって判断することになっています。 

 また、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

 ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。 

 外国(A国)の居住者となるかどうかは、A国の法令によって決まることになります。A国で居住者と判定され、わが国でも居住者と判定される場合、租税条約では、二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めています。どちらの国の居住者となるかを判定するに当たっては、わが国とA国との租税条約によりますが、国籍をひとつの判断要素としている条約もあります(日米租税条約等)。なお、必要に応じ、両国当局による相互協議が行われることもあります。

(参考)国税庁タックスアンサーNo.2012

2017年

3月

10日

海外のマイホームを売ったときの特例(所得税)

 マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。この特例は、国内不動産に限定されていないため、海外不動産でも以下の要件を満たすことができれば適用可能です。

 

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていないこと(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)。

(3) マイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(4) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

 また、このマイホームを売ったときの特例は、次のような家屋には適用されません。

(1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

(2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

(3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

 なお、この特例を受けるためには、確定申告をすることが必要です。

 

 さらに、自分が住んでいたマイホームを売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます(重複適用が可能)が、この特例は国内不動産のみが対象となっています。

(参考)国税庁タックスアンサーNo.3302, 3305

2017年

2月

10日

海外赴任者の納税義務と納税管理人の選任(所得税)

 日本国内の会社に勤めている給与所得者(役員を除く)が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤し、または海外の子会社に出向すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。非居住者が国外勤務で得た給与には、原則として日本の所得税は課税されません。

 したがって、非居住者となる時までに日本国内で得た給与について源泉徴収された所得税を精算する必要があります。精算の方法は、毎年12月に行う年末調整と同じ方法です。この調整による精算は非居住者となる時までに会社で行います。

 また、非居住者の所得のうち、日本国内で発生した一定の所得については、引き続き日本の所得税が課税されます。例えば、国内にある貸家の賃貸料などの不動産所得が一定額以上あれば、毎年確定申告書を提出しなければなりません。

 このような場合には、非居住者の確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等、納税義務を果たすために納税管理人を定める必要があります。

 納税管理人を定めたときには、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。この届出書を提出した以後、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。したがって、納税管理人の住所地を所轄する税務署長に対し行うことはできません。なお、納税管理人は法人でも個人でも構いません。

(参考)国税庁タックスアンサーNo.1921, No.1923

2017年

1月

10日

国外財産調書制度について(所得税)

 国内の居住者(非永住者を除く)は、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者は、その国外財産の種類、数量およびその価額その他必要な事項を記載した「国外財産調書」を、その翌年の3月15日までに、住所地等の所轄税務署に提出しなければなりません。なお、国外財産調書の提出に当たっては、別途「国外財産調書合計表」を作成し、添付する必要があります。

 ここで、「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去 10 年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である者をいいます。また、「国外財産」とは、「国外にある財産をいう」こととされています。

 「国外にある」かどうかの判定については、財産の種類ごとに行うこととされ、例えば、次のように、その財産の所在、その財産の受入れをした営業所又は事業所の所在などによることとされています。

・不動産又は動産は、その不動産又は動産の所在

・預金、貯金又は積金は、その預金、貯金又は積金の受入れをした営業所又は事業所の所在

・有価証券等は、その有価証券を管理する口座が開設された証券会社等の営業所等の所在

 

 国外財産の「価額」は、その年の 12 月 31 日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。また、「邦貨換算」は、同日における「外国為替の売買相場」によることとされています。

 国外財産調書には、提出者の氏名・住所(又は居所)・マイナンバー(個人番号)に加え、国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載することとされています。

 なお、国外財産調書を提出する方が、財産債務調書を提出する場合には、その財産債務調書には、国外財産調書に記載した国外財産に関する事項の記載は要しない(国外財産の価

額を除く。)こととされています。