2022年

1月

10日

所得税法及びこれに関する法令・通達について

 所得税は、原則として個人の所得に対して課される税金であり、法人の所得に課される法人税と並んで直接税の代表的な存在です。

 直接税とは、税金を負担する者が、直接その税金を納めることを予定して立法化された税であり、間接税とは、消費税や酒税のように税金を負担する者が、税金を納める者と異なることを予定して立法化された税のことをいいます。

 所得税は、その所得の性質により担税力に差異があることも考慮して、それぞれの所得が生ずる形態に応じてそれに最も適合した所得金額の計算を行い、その所得に応じた課税を行うために、所得を10種類に分類している点で特徴的な税金です。

 所得税法は、納税義務者、課税標準、税率、申告、納付等について5編243条までの条文で以下のように構成されています。

 第1編 総則(第1条~第20条)

 第2編 居住者の納税義務(第21条~第160条)

 第3編 非居住者及び法人の納税義務(第161条~第180条の2)

 第4編 源泉徴収(第181条~第223条)

 第5編 罰則(第224条~第243条) 

 所得税に関する法令は、所得税法以外にも、法律の委任により又はこれを実施するために所得税法施行令(政令)、同法施行規則(省令)があり、これらが一体となって所得税法を形成しています。

 さらに、所得税法の特例として、政策的な配慮に基づく課税上の特例が租税特別措置法に設けられ、また、これらの法令の解釈や適用に関して、数多くの例規通達が国税庁において定められています。なお、この他に各税法に共通な事項は国税通則法に規定されています。 

・所得税法ーーーー所得税法施行令(政令)ー所得税法施行規則(省令)          

・租税特別措置法ー租税特別措置法施行令ーー租税特別措置法施行規則

・国税通則法ーーー国税通則法施行令ーーーー国税通則法施行規則 

 以上の法令のほかに、告示というものがあります。告示とは、各省大臣や外局の長が、その機関の所掌事務について法令の規定に基づいて、必要な事項を決定して、広く一般に知らせるために、公示することをいいます。この告示は、法令の延長という性格を持ち、国の規則の一部とみられることになります。国税関係では、原則として、法令又は政令の規定に基づく告示は財務大臣が行い、省令の規定に基づく告示は国税庁長官が行っています。

 法律に限らず、政令、省令、告示は、その制定と施行について、一般国民に公表されなければならないものであり、この公表の形式は、官報で交付するという方法で行われています。

 所得税関係の例規通達としては、所得税基本通達、個別通達(申告所得税関係、源泉所得税関係、譲渡・山林所得関係)、租税特別措置法関係通達があり、いずれも公表されています。

 例規通達は、法令とは異なった形式で、国税庁長官が下部機関である国税局長に対し、国税局長が税務署長に対して、それぞれあて名を明示して行う命令です。長官通達は、国税局長を通じて税務職員全般に対する命令となります。

 例規通達は、法令解釈通達と事務運営指針の二つに分類され、前者は法令の解釈を行うものであり、後者は仕事のやり方を定めるものです。法令解釈通達は、各税法の基本的に重要な事柄を網羅的に定めた基本通達と、その時々の事柄の取扱い、税法改正時における取扱いを個々に定めた個別通達の二つに分かれます。

(参考)国税庁 税大講本「税法入門」「所得税法」

2021年

11月

10日

土地仲介手数料の消費税の取り扱いについて

 消費税は、国内において行われる資産の譲渡等及び特定仕入れ並びに保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象としていますが、その取引の中には、消費に負担を求める税としての性格から見て課税の対象とすることになじまないものや、社会政策的な配慮から課税することが適当でないものがあります。このような取引については、非課税取引として消費税を課さないこととされています(6条Ⅰ、Ⅱ)。 

 そして、非課税取引は、消費全般に広く公平に負担を求めるという消費税の性格上、極めて限定されたものとなっており、土地の譲渡及び貸付けはこれに該当しますが、土地仲介手数料はこれに該当しません(6条Ⅰ、Ⅱ、別表第一及び第二)。 

 したがって、土地仲介手数料は課税取引となるため、不動産業者にとっては、課税売上であり、手数料を支払う業者にとっては課税仕入となります。

 ここで、仕入税額控除の計算方法のうち個別対応方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全てを、

① 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの

非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの

③ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの

 に区分し、次の算式により計算した仕入控除税額をその課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する方式です。

(算式)仕入控除税額 = ① + (③ × 課税売上割合)

 この方式は上記の区分がされている場合に限り、採用することができます。

 なお、課税売上割合に代えて、所轄税務署長の承認を受けた課税売上割合に準ずる割合とすることもできます。

 また、一括比例配分方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額が個別対応方式の①、②及び③のように区分されていない場合又は区分されていてもこの方式を選択する場合に適用します。

 その課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する仕入控除税額は、次の算式によって計算した金額になります。

(算式) 仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

 なお、この一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできず、課税売上割合に準ずる割合は適用できません。

 以上より、土地仲介手数料は不動産業者にとっては、課税売上になり、手数料を支払う業者(買主にとっては、課税仕入となり、土地の購入は非課税仕入になります。

 手数料を支払う業者(売主)にとっては、課税仕入なり、土地の売却は非課税売上となるため、個別対応方式ではその仕入税額は②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るものとして、控除することができず、一括比例配分方式ではその仕入税額のうち課税売上割合に対応する部分しか控除できないことになります。この場合、土地の譲渡は非課税取引であり、課税売上割合が低下するため、必ずしも一括比例配分方式を選択することが有利になるとは限りません。

2021年

10月

10日

不動産売買契約における固定資産税清算金の消費税について

 消費税の課税の対象は、国内において事業者が行った資産の譲渡等及び特定仕入れです。

 資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい(消費税法2条Ⅰ⑧、Ⅱ)、特定資産の譲渡等に該当するものは除かれます(4条Ⅰ括弧書)。 

 したがって、課税の対象となる資産の譲渡等は、次に掲げる①~⑤の全ての要件を満たす取引をいいます。

① 国内において行う取引(国内取引)であること

② 事業者が事業として行うものであること

③ 対価を得て行うものであること(代物弁済等、みなし譲渡を含む。)

④ 資産の譲渡、貸付け及び役務の提供であること

⑤ 特定資産の譲渡等に該当しないこと

 ここで、「事業者」とは、事業を行う個人及び法人をいい(2条Ⅰ③、④)、「事業として行う」とは、資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供を反復、継続、かつ、独立して行うことをいい、事業に使用していた資産の売却など事業活動に付随して行われる取引もこれに含まれます(同法施行令2条Ⅲ)。

 また、「資産の譲渡等」とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいいます(2条Ⅰ⑧)。

 さらに、「特定資産の譲渡等」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」をいいます(2条Ⅰ⑧の②)。

 では、買主が分担する不動産売買契約における固定資産税清算金(未経過固定資産税等)は、消費税法上どのように取り扱われるのでしょうか。固定資産税清算金が消費税の課税の対象となるかが問題となります。

 この点について、消費税法基本通達(10-1-6)では、「不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象」となる、とされています。

 つまり、①国内で、②事業者が利益調整のための事業として、不動産の譲渡に伴い、固定資産税精算金を譲渡対価と別に受領している場合、③④⑤不動産の譲渡対価の一部として金銭を授受していることになるため、その固定資産税精算金相当額は、①~⑤の全ての要件を満たす取引として、消費税の課税の対象となります。

 したがって、買主が分担する土地に係る固定資産税精算金は、土地の対価の額に含まれることになり、消費税法上は非課税売上となります。一方、建物に係る固定資産税精算金は、建物の譲渡対価の額に含まれることになり、消費税法上は課税売上として取り扱われます。

2021年

4月

10日

源泉所得税の納期の特例と不納付加算税について

 給与、報酬などの特定の所得の支払者が、その所得の支払をする際に、所定の方法により所得税額を計算し、支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付する制度を、「源泉徴収制度」といいます。

 源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっていますが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行うことにより、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税について、次のように年2回にまとめて納付できるという特例制度を受けることができます。

・1月から06月までに支払った所得から源泉徴収をした分:当年7月10日

・7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした分:翌年1月20日

 ここで、源泉徴収等による国税が法定期限内に納付されなかった場合について、国税通則法第67条には、以下のように規定されています。

 「源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には、税務署長又は税関長は、当該納税者から、納税の告知(第36条第1項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)をいう。次項において同じ。)に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

2 源泉徴収等による国税が納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは、その納付された税額に係る前項の不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする。

3 第1項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があったと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、当該納付に係る源泉徴収等による国税が法定納期限から1月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。」

 納期の特例を受けている場合、不納付加算税の対象金額が半年分と多くなりますが、同条第2項では、納税の告知を受けることなく自主的に納付した場合は、10%ではなく、5%の不納付加算税が課せられ、同条第1項及び第3項では、①正当な理由があると認められる場合、②法定納期限までに納付する意思があったと認められ、かつ1月以内に納付した場合には、不納付加算税が課されないこととされています。

 ①の正当な理由があると認められる場合とは、例えば、源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由のない場合や災害、交通・通信の途絶その他法定納期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められる場合ですが、税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たりません(事務運営指針)。

 ②の期限内申告書を提出する意思等があったと認められる場合とは、法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収等による国税について、納税の告知を受けたことがなく、かつ納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実がない場合をいいます(同法施行令第27条の2)。

2021年

3月

10日

青色申告特別控除について

 青色申告は、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる申告の制度で、青色申告をすることができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

 青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。

 青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その一つに所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2)があります。

1.55万円の青色申告特別控除

 この55万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。 

 不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額が55万円より少ない場合には、その合計額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額をいい、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算します。控除の順序は、不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除(同法基本通達25の2-1)します。

2.65万円の青色申告特別控除

 この65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)上記1の要件に該当していること

(2)次のいずれかに該当していること

① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること(電子帳簿保存法施行規則第3条第1項参照)。

② その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

3.10万円の青色申告特別控除

 この控除は、上記1及び2の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

4.留意点

 不動産所得を生ずべき業務が、事業的規模で行われていない場合には、1(2)の「事業」に該当しない(所得税法基本通達26-9)ため、55万円(65万円)の青色申告特別控除を適用することはできず、10万円の青色申告特別控除が適用されることになります。ただし、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業のいずれか一方があれば55万円(65万円)の控除を受けることができます(租税特別措置法25条の2第3項)。

 したがって、事業所得と不動産所得が両方ある場合には、不動産貸付けの規模にかかわらず、55万円(65万円)控除の要件を満たすことになります。

 なお、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいい、事業所得であれば1(2)の「事業」に該当することになります。

 また、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算しますので(同法基本通達25の2-1)、事業所得が赤字であっても。事業的規模に関わらず不動産所得から55万円(65万円)の控除を受けることができます。 

2020年

4月

10日

仮決算による消費税の中間申告について

 消費税の課税期間は原則として1年ですが、中間申告制度が設けられています。

 中間申告書の提出が必要な事業者は、個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度(前課税期間)の消費税の年税額が48万円を超える者です。この年税額には、地方消費税額は含みませんが、中間納付税額と併せて地方消費税の中間納付税額を納付することになります。ただし、課税期間の特例制度を適用している事業者は、中間申告書を提出する必要はありません。中間申告は直前の課税期間の確定消費税額に応じて、①中間申告の回数、②中間納付税額、③中間申告提出・納付期限は、次のようになります。

1.48万円以下

 原則、中間申告不要、任意の中間申告制度あり

2.48万円超から400万円以下

 ①年1回、②直前の課税期間の確定消費税額の6/12、③各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2月以内

3.400万円超から4,800万円以下

 ①年3回、②直前の課税期間の確定消費税額の3/12、③各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2月以内

4.4,800万円超

 ①年11回、②直前の課税期間の確定消費税額の1/12、③年11回の中間申告の申告・納付期限は、個人事業者は、1月から3月分は5月末日で、4月から11月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2月以内です。法人は、その課税期間開始後の1月分はその課税期間開始日から2月を経過した日から2月以内で、その1月分以後の10月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2月以内です。

 上記に代えて、中間申告対象期間を一課税期間とみなして仮決算を行い、それに基づいて納付すべき消費税額及び地方消費税額を計算することもできます。申告の負担は大きくなりますが、前期に比べ業績が著しく悪化しており、資金繰りの改善が求められる場合には、消費税額を下げられる可能性があります。この場合、計算した税額がマイナスとなっても還付を受けることはできません。また、仮決算を行う場合にも、簡易課税制度の適用があります。

 一般課税の場合、課税期間の課税売上高が5億円を超えると、課税売上割合が95%以上であっても100%でない限り、その課税仕入れに係る税額を全額控除できません。課税期間が1年未満の場合、その課税期間における課税売上高を年換算して5億円を超えるかどうかを判定しなければなりません。仮決算による中間申告をする場合、この課税期間の課税売上高は、年換算して判定することになります。例えば、消費税の中間申告が11回であれば、課税期間が1月です。したがって、その課税期間の課税売上高が500万円であれば、500万円×12=6億円となり、全額控除できないこととなります。

 ここで、「基準期間」とは、個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいいます(消費税法2条⑭)。また、「課税期間」とは、個人事業者については1月1日から12月31日までの期間で、法人については事業年度です(法14条Ⅰ①②)。仮決算は、中間申告対象期間を一課税期間とみなす制度ですから(法43条)、法14条の例外規定で、法2条の「事業年度」に変更はありません。よって、「基準期間」には、変更がありません。

 確定申告による中間納付税額の調整として、中間申告による納付税額がある場合には、確定申告の際にその納付税額が控除され、控除しきれない場合には還付されることになります。