2021年

2月

10日

国税通則法の期間及び期限について

 国税通則法は、税法の一般法という地位を占めています。同法第4条(他の国税に関する法律との関係)は、この関係を明確にするため、「この法律に規定する事項で他の国税に関する法律に別段の定めがあるものは、その定めるところによる。」と規定しています。

 また、滞納処分の手続については、国税徴収法が個別に規定していますが、書類の送達、期間などの共通する事項については通則法が規定しています。これとは逆に不服審査及び訴訟については、それぞれ行政不服審査法及び行政事件訴訟法が一般法の地位にあり、その限りにおいては、国税通則法はこれらの法律の特別法となっています(通80①、114)。 

1.期間について

 期間とは、ある時点から他の時点に至る継続した時の区分をいい、国税に関する法律において、日、月又は年をもって定める期間の計算は同法10条に規定されています。ただし、「2月16日から3月15日まで」(所120①)のように、確定日から確定日までと定める期間については、期間の計算を行う必要がないので、期間計算の規定は適用されません。

(1)起算点

 期間の初日は算入しないで、翌日を起算日とするのが原則です(通10①本文)。つまり、期間計算開始の契機となる事実が発生した当日(初日)を切り捨てて、その翌日を計算上最初の1日(起算日)とします。これを初日不算入の原則といいます。「その理由のやんだ日から2月以内」(通11)という場合は、その理由のやんだ日(初日)ではなくて、その翌日が起算日となります。

 期間が午前0時から始まるとき、又は特に初日を算入する旨の定めがあるときは、初日を起算日(初日算入)とします(通10①ただし書)。「終了の日の翌日から2月以内」(法74①)という場合は、初日である終了の日の翌日の午前0時から期間が始まるため、その日が起算日となります。また、「督促状を発した日から起算して10日を経過した日」(通40)という場合は、期間の初日(起算日)を明確にしているため、その日が起算日となります。

 経過する日とは期間の末日をいい、経過した日とは期間の末日の翌日をいいます。

 以前・以後(以内)は、起算点又は期限の満了点となる日時を含みますが、前・後は、起算点又は期限の満了点となる日時を含みません。「損失を受けた日(8/15)以後1年以内に納付すべき国税」(通46①)という場合は、起算日は8/15で、満了日は翌年の8/14です。「公売の日(5/25)の少なくとも10日前までに」(徴95①)という場合は、起算日が5/24で、満了日が5/15ですから、5/14(10日前である15日の前日)が(公告)期限です。

(2)計算と満了点

 期間が月又は年をもって定められているときは、暦に従って計算します(通10①二)。 暦に従うとは、1月を30日又は31日とか、1年を365日とかというように日に換算して計算することではなく、例えば、1月といった場合は、翌月における起算日に応当する日(応当日)の前日を、1年といった場合は、翌年における起算日の応当日の前日を、それぞれの期間の末日として計算することをいいます(通10①三)。

 月又は年の始めから期間を起算するときは、最後の月又は年の末日の終了時点(午後12時)が期間の満了点です。「2月1日から3か月間」という場合は、年の平閏や月の大小にかかわらず、2月を最初の月として月数を数え、3月目の4月の末日が満了日になります。

 月又は年の始めから期間を起算しないときは、最後の月又は年において起算日の応当日の前日の終了時点が期間の満了点です(通10①三本文)。「1月15日から5か月間」という場合は、翌月から数えて5月目の6月15日が応当日となり、その前日の同月14日が満了日です。

 この場合、最後の月に応当日がないときは、その月の末日の終了時点が期間の満了点です(通10①三ただし書)。「1月31日から1か月間」という場合は、翌月の2月には応当日(31日)がなく、平年であれば同月28日(閏年であれば29日)が満了日となります。

 期間が過去に遡る場合の計算方法についての法令は存在しないため、通常の期間の計算方法に関する規定を類推適用します(通基通(徴)10-1、-2、民140、143)。その起算日が「法定納期限の1年以上前」(徴35①)のように、丸1日として計算できる場合を除き、その前日を第1日として過去に遡って期間を計算します。

2.期限について

 期限とは、法律行為の効力の発生、消滅又は法律行為や事実行為の履行が一定の日時の到来にかかっている場合における、その一定の日時をいいます。期限には、3月15日、7月31日など確定日によるもののほか、期間の末日も含まれます

 国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもって定める期限などを除きます。通令2①)が日曜日、国民の祝日に関する法律に定める休日、その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、 これらの日の翌日が期限とみなされます(通10②)。  

(略語)通=国税通則法、法=法人税法、所=所得税法、民=民法

    通令=国税通則法施行令、通基通(徴)=国税通則法基本通達(徴収部関係)

2021年

1月

10日

相続税に係る外国税額控除について

 相続税は、死亡した人(被相続人)の財産を相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した配偶者や子など(相続人等)に対して、その取得した財産の価額を基に課される租税です。

 相続税法では、他の税目に見られない特徴があり、相続又は遺贈により財産を取得した者が納付する相続税額を計算するためには、次のように4つの段階の計算が必要です。

1.第1段階課税価格の計算

 相続又は遺贈により財産を取得した者に係る課税価格(各人の課税価格)を個々に計算し、その後、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者の相続税の課税価格の合計額を計算します。

2.第2段階 (相続税の総額の計算

 課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額(課税遺産総額)を基に相続税の総額を計算します。

3.第3段階各人の算出税額の計算

 相続税の総額を各人が取得した財産の額(割合)に応じて配分し、各人の算出税額を計算します。

4.第4段階各人の納付税額の計算

 各人の算出税額から各人に応じた各種の税額控除額を控除し、各人の納付すべき税額を計算します。

 ここで、相続税の税額控除として、在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)があります(相続税法20の2条)。

 同条は、在外財産に対する相続税額の控除について、「相続又は遺贈によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、遺産に係る基礎控除から相次相続控除(15条から20条の2)までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により算出した金額に当該財産の価額が当該相続又は遺贈により取得した財産の価額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分のうちに占める割合を乗じて算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。」と規定しています。

 これは、いわゆる国際二重課税の緩和規定であり、外国税額控除の適用を受けることができる者は、次の要件に該当する者です。

(1)相続又は遺贈(相続開始の年にその相続に係る被相続人から受けた贈与を含む。)により財産を取得したこと

(2)取得した財産は、法施行地外に所在するものであること

(3)取得した財産について、その財産の所在地国において相続税に相当する税が課税されたこと

 また、外国税額控除による控除額は、次の(1)または(2)のいずれか少ない金額となります。

(1)財産の所在地国で課せられた税額

(2)相続税額×分母のうち国外財産の価額÷相続税の課税価格計算の基礎に算入された財産の価額

 相続税の税額控除等は、贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、在外財産に対する相続税額の控除の順序で行われ、先順位の税額控除をして、相続税額が零となる場合又は当該税額控除の金額が控除しきれない場合は、後順位の税額控除をすることなく、その者の納付すべき相続税額はないものとなります(同法基本通達20の2-4)。

2020年

12月

10日

贈与税に係る外国税額控除について

 贈与税は、個人からの贈与により財産を取得した者に対して、その取得財産の価額を基に課せられる租税です。

 贈与税の課税価格は、その年1月1日から12月31日までの間に贈与により取得した財産及び贈与により取得したものとみなされる財産の価額の合計額となります(相続税法21の2条)。なお、贈与により取得した財産のうちに非課税財産があるときは、課税価格計算の基礎に算入されません(21の3条)。

 贈与税の税額の計算は、課税価格から、贈与税の「基礎控除」及び「配偶者控除」を控除した後の金額に税率を適用して、納付すべき税額を計算します(21の7条)。

 ここで、贈与税の税額控除として、在外財産に対する贈与税額の控除(外国税額控除)があります(21の8条)。

 同条は、在外財産に対する贈与税額の控除について、「贈与によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により贈与税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、相次相続控除又は相続時精算課税に係る贈与税の税率の規定により計算した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した残額をもつて、その納付すべき贈与税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により計算した金額に当該財産の価額が当該財産を取得した日の属する年分の贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて計算した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。」と規定しています。

 よって、外国税額控除による控除額は、次の1または2のいずれか少ない金額となります。

1.財産の所在地国で課せられた税額

2.贈与税額×分母のうち国外財産の価額÷贈与税の課税価格計算の基礎に算入された財産の価額

 適用要件については、例えば、国内に住所を有する受贈者が、米国在住の父から同地に所在する不動産の贈与を受けた場合、米国は相続税の課税について遺産税体系を採っており、当該贈与については、日本のように受贈者でなく、贈与者である父に贈与税が課せられています。

 同条は、「在外財産に対する贈与税額の控除」として、贈与により国外にある財産を取得した場合に、当該財産につきその国(地)の贈与税に相当する租税が課せられたときには、その財産に係る日本の贈与税額を限度としてその国(地)の贈与税額を控除する旨を定めており、その要件は、受贈者に贈与税が課せられたということではなく、あくまで、贈与財産について贈与税が課せられたということです。

 したがって、日本において受贈者に課せられる贈与税額の計算上、贈与者に課せられる贈与税額(外国税額)であっても、当該外国税額を控除することができます。

2020年

9月

10日

米国の相続税(Eatate Tax)について

 相続税(Eatate Tax)は、死亡時に財産を譲渡する権利に対する税金です。これは、死亡日に所有している、又は特定の持分を持っているすべてのものの勘定から構成されています。これらの品目の公正な市場価値が使用されますが、必ずしもそれらに支払った金額や、取得したときの価値によるものではありません。これらすべての品目の合計が、総遺産評価額(Gross Estate)です。含まれる遺産としては、現金および有価証券、不動産、保険、信託、年金、事業持分及びその他の資産があります。

 総遺産評価額から特定の控除(及び特別の状況下では価値の減少)を行って、課税対象遺産(Taxable Estate)を計算します。これらの控除には、住宅ローンやその他借入金、不動産管理費、生存配偶者や適格慈善団体に渡される財産が含まれます。一部の事業持分又は農場は、適格財産として価値を減少できる可能性があります。

 正味遺産評価額(Net Amount)が計算された後、生涯課税対象の贈与(lifetime taxable gifts:1977年にされた贈与から開始)の額が加算され、税金が計算されます。その税金は、利用可能な統一税額控除(Unified Credit)によって減額されます。

 ほとんどの比較的単純な遺産(現金、上場証券、少額の簡単に評価できるその他資産、特別な控除や選択適用がない資産、又は共有資産)は、相続税申告書の提出を必要としません。 2021年においては、総遺産と以前の課税対象贈与の合計が基礎控除額(filing threshold)の11,700,000ドルを超える不動産については、提出が必要です。 

 2011年1月1日以降、生存配偶者は、被相続人の財産について、被相続人の未使用の免除を引き継ぐことを選択できます。この選択は、生残配偶者がいる被相続人のために適時に提出された相続税申告書に基づいて行われます。 

 死亡時に米国市民(U.S. citizens)又は米国居住者(U.S. residents)であった被相続人の財産については、遺言執行者(Executor)から相続税申告書(Form 706)の提出が求められます。相続税において、居住者とは、死亡時に米国に居住していた人のことです。

 遺言執行者には、個人の代表者、又は被相続人の財産の管理者が含まれます。これらのいずれも米国で任命され、資格を与えられ、行動していない場合、被相続人の財産を実際に又は建設的に所有しているすべての人は遺言執行者と見なされ、申告をしなければなりません。

 死亡時に米国市民でも米国居住者でもなかった被相続人は、被相続人の死亡日における米国に所在する資産、特別贈与税免除と調整課税対象贈与の金額がともに、基礎控除額の60,000ドルを超える場合、遺言執行者から相続税申告書(Form 706-NA)の提出が必要です。

2020年

6月

10日

外国人の帰国時における個人住民税について

 住民税には、所得のある人が一律に負担する均等割とその人の所得金額に応じて負担する所得割とがあります。

 個人の住民税は、住民にとって身近な仕事の費用をそれぞれの負担能力に応じて分担し合うという性格の税金であり、所得税は法人や個人が税金を納めるしくみとなっているのに対し、個人住民税は市区町村が税金を計算して法人や個人に通知をし、税金を徴収するしくみとなっています。

 住民税は、前年中(1月1日~12月31日)の所得について、下記の人を対象にして課税されます。

〇1月1日現在で市区町村に住所を有する人(均等割と所得割)

〇1月1日現在で市区町村に住所を有していないが、市区町村内に事務所、事業所または家屋敷を有する人(均等割)

 このように住民税は、前年の所得に対して翌年に課税されるため、帰国のタイミングによっては、納税方法が異なる場合が生じます。例えば、2020年に米国に帰国した給与所得者の場合には、下記のようにケースごとに2019年度と2020年度の住民税を納付する義務があります。

1.2019年度の住民税

・2019年1月1日に居住している人に課税される。

・2019年6月~2020年5月の給与で会社が特別徴収する。

 ①2020年5月までに帰国

 ・退職時の給与で一括徴収し、会社を通じて納付する、または

 ・普通徴収に切り替えて、本人が納付する。

 ②2020年6月以降に帰国

 ・2020年5月まで会社が特別徴収することにより納付は完了する。

2.2020年度の住民税

・2020年1月1日に居住している人に課税される。

・2020年6月~2021年5月の給与で会社が特別徴収する。

 ①2020年5月までに帰国

 ・会社で特別徴収するのは、2020年6月以降であるため、本人が納付する。

 ②2020年6月以降に帰国

 ・退職時の給与で一括徴収し、会社を通じて納付する、または

 ・普通徴収に切り替えて、本人が納付する。

 ここで、従業員(納税義務者)が転勤、退職、休職、死亡等により、給与の支払を受けなくなった場合は、特別徴収ができなくなった旨を、給与支払者(特別徴収義務者)から「給与所得者異動届出書」の提出により届け出る必要がありますが、この届出書に記載された住所先に住民税の納付書が送達されることになります。

 納税義務者が出国により納税等ができなくなる場合は、「納税管理人申告書兼承認申請書」により、納税管理人の届け出が求められ、納税管理人とは、納税義務者から納税に関する手続き(書類の受け取り、納税、還付金の受領など)を委託された人をいい、法人等の事業所を指定することもできます。 

 なお、本人の住民税を会社が負担した場合、本人の所得とみなされ、20.42%の税率で源泉徴収義務が発生することにも留意が必要です。

2020年

5月

10日

米国のコロナ経済的影響支払金(Economic Impact Payments)

 米国市民や米国居住者は、コロナウイルス援助、救済、および経済的安全保障法(CARES法)によって認可された経済的影響支払金(Economic Impact Payments)を受け取ることができます。

 米国内国歳入庁(IRS)は、継続して計算を行い、資格のあるほとんどの人に自動的に支払金を送付していますが、一部の人は、支払いを受けるためにIRSに追加情報を提供しなければならない場合があります。

 米国市民及び米国居住者は、他の納税者の被扶養者ではなく、就労資格のある社会保障番号(SSN)を持ち、調整総所得(adjusted gross income)が次の金額を超えない場合、1,200ドル又は2,400ドル(夫婦合算申告)の経済的影響支払金が支給されます。

 

・夫婦合算申告(married couples filing joint returns)は150,000ドル

・世帯主の申告者(head of household filers)は112,500ドル

・その他の場合(all other eligible individuals)は75,000ドル

 

 納税者は、調整総所得がこれらの金額を超えた場合であっても、5%減額された支払金を受けることができます。

 適格退職者や適格受給者は、確定申告をしていなくても、自動的に1,200 ドルの支払いを受けることになります。

 ただし、住民基本台帳に記録されているすべての人が対象となる日本の特別定額給付金と異なり、以下のいずれかに該当する高所得者などの一部の申告者は経済的影響支払金の対象から除外されています。

 

・適格となる子供がおらず、調整後の総所得が以下よりも多い場合

 夫婦合算申告(married couples filing joint returns)は198,000ドル

 世帯主の申告者(head of household filers)は136,500ドル

 その他の場合(all other eligible individuals)は99,000ドル

・雇用のために有効な社会保障番号を持っていない場合

・非居住者(nonresident alien

・2019年にForm 1040-NR、1040NR-EZ、1040-PR、1040-SSを提出している場合

・投獄された個人(An incarcerated individual

・死亡した個人(A deceased individual

・相続や信託(estate or trust

 

 国外に居住する米国市民は、この支払いの対象となります。前述のとおり、Form 1040またはForm 1040-SRを提出する資格のある人は、有効なSSNを持っており、他の納税者の扶養家族として請求できない場合は、誰でも対象となります。Form 1040-NRまたはForm 1040-NR-EZを提出している、または提出しようとしている非居住者は、この支払いの対象とはなりません。

2020年

3月

10日

米国公認会計士(US CPA)の更新について

 米国公認会計士(US CPA)のライセンスは永久資格ではありません。各州の規定に従って定期的にライセンスを更新しなければなりません。

 例えば、ワシントン州(Washington State)では、ライセンスを認定された個人はすべて、3年ごとに翌年1月1日から4月30日までに更新する必要があります。CPA Verifyにアクセスすれば、資格情報の有効期限を確認することができます。

 資格の有効期限が切れる前の年の12月31日までに、必要な継続専門教育(CPE)を完了して更新を行います。ワシントン州では、ライセンスまたは更新申請を提出する前に継続専門教育を完了する必要があります。2020年1月1日から有効なCPEクレジット時間の年間最小値が20クレジットにルール変更されました。従来は、3年間のトータルで120クレジットを取得すればよく、年間最小値は定められていなかったため、更新が大変になりました。

 新ルールの下でも、日本人がよく利用しているCPE depotといったCPEクレジット業者を選定し、自分の業務に関連したり、興味があるアカウンティングや監査、税務などのクレジットを取得すること自体には変更はありません。ただ、3年分をまとめて1年でクレジットを取得することは認められなくなりました。これにより、クレジットを取得するための年間当たりの費用は増加しますが、CPEクレジット業者を12月31日にまたがって更新するなどして工夫をすれば、その費用を少しでも削減することは可能です。

 3年ごとに個人のライセンスに求められるCPEの要件は以下のとおりです。

・1年間に最小20時間(20 CPE credit hour annual minimum

・ワシントン州が認定した倫理コースを含んで合計120時間

120 hours of CPE Including a Board Approved Washington State Ethics Course

 SecureAccess Washingtonからオンラインアカウントにログインし、更新申請を完了します。更新料は230ドルですが、4月30日以降に更新申請する場合には、100ドルの延滞料が含まれます。

 オンライン更新申請中に、修了したワシントン州倫理コースを入力するように求められます。CPE監査に選ばれたことが通知された場合にのみ、CPE文書を提出しなければなりません。また、クレジットを請求するレポート期間の終了後、3年間は記録を保持する必要があります。6月30日までに更新しない場合、資格は失効してしまうことになります。

 日本の公認会計士(JP CPA)には更新の制度はありませんが、毎年の継続教育が義務付けられており、年会費は10万円以上かかります。このことからすると、事実上、毎年継続教育を行ったうえで、年間10万円以上の更新料を支払っていることと同視でき、米国の公認会計士の維持費は相対的にはまだ低いものであると考えられます。

2020年

2月

10日

日米の離婚扶養料に係る所得税について

 日米租税条約第17条第3項は、「書面による別居若しくは離婚に関する合意又は別居、離婚等に伴う扶養料等に関する司法上の決定に基づいて行われる配偶者若しくは配偶者であった者又は子に対する定期的な金銭の支払であって、一方の締約国(米国)の居住者から他方の締約国(日本)の居住者に支払われるものに対しては、当該一方の締約国(米国)においてのみ租税を課することができる。ただし、当該支払が、当該一方の締約国(米国)において当該支払を行う個人の課税得の計算上控除することができない場合には、いずれの締約国においても租税を課することができない。」と定めています。

 米国の居住者から日本の居住者に支払われる離婚等に伴う扶養料については、米国でのみ課税することができるとされていますが、米国の居住者が所得控除を使用できない場合には、日米双方で課税できないとされています。

 したがって、日本の居住者が米国の居住者から離婚等に伴う扶養料を受け取る場合、米国の居住者である支払者が、米国で所得控除を行っていれば、米国に非居住者としての連邦所得税の申告が必要になります。 

 米国では、離婚合意に基づいて元配偶者に支払う離婚支払金は、一般的には、連邦所得税における離婚等に伴う扶養料(Alimony)と扱われ、離婚等に伴う扶養料は、もし支払者が納税者であれば、所得控除の対象になります。一方、受け取った配偶者は、その額を申告時において所得に含めなければなりません。

 2019年以降に支払いが開始される離婚等に伴う扶養料は、支払者が所得控除できなくなりましたが、受取者も所得に含める必要がなくなりました。

 2018年以前に離婚合意していた方についても離婚協議の内容を変更し、申告時に支払者は所得控除をせず、受取者も所得に含めないということを宣言すれば同様の取り扱いができることになります。

 ただし、上記変更の取り扱いは連邦所得税に関するものであり、州税については各州によって異なります。例えば、カリフォルニア州(California State)では従来どおり、受け取った離婚等に伴う扶養料はカリフォルニア州の所得として所得税の申告をする必要があります。

 日本では、子供への養育費については、所得税法上、受取者も支払者も非課税とされていますが、配偶者への離婚に伴う財産分与はそのやり方によっては課税されるケースがありますので、注意が必要です。

2019年

11月

10日

日米の贈与税に係る暦年課税について

 贈与税は、個人から財産をもらったときに受贈者に対してかかる税金です。

 会社など法人から財産をもらったときは贈与税はかかりませんが、所得税がかかります。

 また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。

 ただし、死亡した人が自分を被保険者として保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合は、贈与税でなく相続税の対象となります。

 贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。

 暦年課税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。この場合、贈与税の申告は不要です。

 米国では、贈与者(the donor)は原則として贈与税(the gift tax)を納付する義務があります。贈与(gift)とは、直接的間接的を問わず、対価を伴わない個人に対する金銭価値の移転と定義されています。どのような贈与であれ贈与税が課されることになりますが、代表的には以下の例外があげられます。

1.暦年課税の基礎控除額(the annual exclusion)以下の贈与

2.他者への授業料や医療費の支払額(the educational and medical exclusions

3.配偶者への贈与

4.政治活動資金としての政治団体への贈与

 米国の暦年課税の基礎控除額は、2018年と2019年で$15,000です。この基礎控除額は、各々の受贈者(each donee)に対して適用されます。例えば、2019年に父親が2人の子供に対してそれぞれ$15,000づつ贈与した場合には、贈与税の申告は不要です。何人の贈与者から贈与を受け取っても受贈者に贈与税の申告義務はありませんが、州によっては受贈者に州税の申告義務が課せられることがあります。また、上記の例において夫婦が共同で贈与を行う場合には基礎控除額は$30,000になります。

 このように、日本では受贈者に対して贈与税がかかりますが、米国では贈与者に贈与税がかかることになり、基礎控除額や例外とされる内容も異なります。

 日米に係る贈与税の申告にあたっては、受贈者と贈与者の相違や贈与額、居住者と非居住者、米国市民であるか否か、さらには相続時精算課税との関係にも留意して課税関係を把握する必要があります。

2019年

9月

10日

米国個人納税者番号(ITIN)について

 米国社会保障番号(Social Security Number, SSN)は、米国籍の方及び米国の永住権を持つ方(グリーンカード保持者)、米国籍以外の方で米国内で働く許可を得た方、あるいは米国連邦年金受給のために社会保障番号が必要な方のみが取得できる番号のことです。

 米国社会保障番号を取得する資格のない方には、納税申告用として米国の税務当局である内国歳入庁(IRS)により個人用納税者番号(Individual Taxpayer Identification Number, ITIN)が発行されます。この納税者番号は連邦所得税の納税目的にのみ使われるもので、身分を証明するものでも米国内における滞在資格や就労の資格を与えるものでもありません。

 個人納税者番号を取得するためには、IRS申請書(W−7)を記入します。個人用納税者番号を申請する際に、各申請者は連邦所得税申告のために納税者番号が必要だということを証明しなければなりません。連邦所得税申告書、または例外として連邦所得税申告書の提出の必要がない場合にはそれを裏付ける書類を添付します。例えば、当年度において米国不動産の賃貸収入があり、源泉徴収業者にITIN提供する場合には、源泉徴収業者からのサイン付きの書類を添付します。個人用納税者番号は、申請から発行までは通常7週間かかります。発行時には申請者の住所に郵送で通知されます。

 また、同時にIRS納税者番号取得にあたっては、本人証明としてパスポートの原本またはパスポート認証を送付をしなければなりません。米国大使館/領事館では、IRSの納税者番号(ITIN/PTIN)取得の場合のみ、米国籍以外のパスポート認証を受け付けて(事前予約制)います。日本のパスポート認証には、原本が必要ですが、パスポートの認証は、本人ではなく代理申請も可能です。その場合、認証を受けるパスポートの原本及び、代理者の身分証明書の提示が求められますが、本人からの委任状等は必要ありません。

 申請自体はいつでも可能ですが、少なくとも当年度の納税申告期限までには提出しなければなりません。申告期限後の提出は、利子税や加算税の対象になります。

 個人納税者番号は、あくまでも納税申告用の番号であり、連続して3年間納税申告がない場合には失効します。再発行は可能です。

2019年

6月

10日

米国所得税の申告期限の延長について

 米国の所得税申告書の提出期限は原則として4月15日です。申告期限までに作成が間に合わず申告書が提出できない場合は、申請によって提出期限の延長(Extension of Time To File Your Tax Return)が認められます。延長申請書(Form 4868)に必要事項を記入して、4月15日までに米国内国歳入庁(IRSへ郵送提出すると、6ヶ月間延長(国外勤務の米国市民はさらに2ヶ月)されて提出期限は10月15日になります。

 この場合、認められるのは申告書の提出期限の延長であって、税金納付の延長でありません。税金不足分は延長申請書に小切手を添付して支払わなければなりません。確定申告書の提出時に確定申告の見積額とそれまでの納付額とを比べて税金の清算をします。延長期限までに申告書を提出するときに還付であれば問題ありませんが、追加納付になる場合は延滞利息が課されます。利率はIRSが3ヶ月ごとに公表するレートを適用します、

 税金不足額が確定申告額の10%を超えた場合には、延滞利息に加えて遅延納付ペナルティ(Late Payment Penalty)が課されます。ペナルティは税金不足額に加えて1ヶ月遅れるごとに税金不足額の0.5%、ただし最高25%です。ペナルティを避けるため、申告期限延長する場合には必ず税額を算出し、税金不足額が生じる場合は延長申請書とともに納付を済ませておくことが必要です。

 また、期限前に申告がない場合、税金不足額に加えて1ヶ月遅れるごとに税金不足額の5%がペナルティ(Late Filing Penalty)として加算、最高25%まで課されます。税金の追徴課税の時効は申告書を提出してから通常3年で成立しますが、25%以上の大幅な申告漏れの場合は6年となります。IRSの税務調査では、領収書や明細書が調査対象となるので、関係ある書類等は少なくとも3年間は大事に保存すべきでしょう。

 州税についても提出期限を延長する必要があります。ほとんどの州では、還付が見込まれて追加納付が発生しない場合、連邦所得税の延長申請書が提出されていれば別途州税の延長申請書を提出する必要がありません。州税の延長申請書を必要とするのは、延長申請時点で追加納税が発生する場合です。

2019年

3月

10日

米国市民への二重課税の排除について

 米国市民であれば、日本に滞在して日本の居住者であったとしても米国の居住者と同様に、全世界所得課税(日米双方の所得に課税)を受けることになります。つまり、米国市民は課税上、常に米国の居住者として取り扱われ、結果的に米国市民は米国に居住していなくても日米租税条約の対象になります。

 ここで日米租税条約上、居住者とは、「住所、居所、市民権、本店又は主たる事務所の所在地、法人の設立場所その他これらに類する基準において」その国で居住者としての課税(全世界所得課税)を受けるべきものとされる者であり、非居住者とは国内源泉所得のみに課税を受ける者となります。

 日米租税条約には、1条4項において、日米の居住者に対する課税や米国市民に対する米国の課税に影響を及ぼすものではないという、いわゆるセイビング・クルーズ(saving clause)が定められており、米国市民が日本の居住者に該当する場合であっても、日米租税条約の影響を受けずに、米国国内法に基づく課税が行われることになっています。

 こうしたことから日本の居住者である米国市民は、日米で全世界所得課税を受けるという二重課税の問題が生じることになります。日米租税条約では、この二重課税を排除することを主たる目的として、23条において日本の居住者である米国市民が外国税額控除を適用することができる規定が定められています。

 23条では、以下のそれぞれのケースごとに外国税額控除の規定が定められています。

・第1項:日本の居住者が米国で課された税金を控除するケース

・第2項:米国の居住者が日本で課された税金を控除するケース

・第3項:米国市民が米国源泉の所得に対して日本で課された税金を控除するケース

 

 第1項と第2項は、それぞれの国内法に則って、外国税額控除を適用することを正当化しただけのことではありますが、第3項は米国源泉の所得を日本源泉の所得とみなして外国税額控除を適用するという特徴的な規定になっています。

2019年

2月

10日

日米社会保障協定について

 日米社会保障協定とは、「社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」のことであり、平成 17年(2005年)10月1日に施行されました。

 日米社会保障協定が発効する前は、日米間においては、企業等より相手国に一時派遣される被用者等について、日米両国の年金制度および医療保険制度の双方に加入が義務付けられ、社会保険料の二重払いの問題が生じていました。また、相手国における就労期間が短いために年金の受給に必要な期間を満たさず年金を受給できないとの問題が生じていました。

 日米社会保障協定は、日米両国の年金制度および医療保険制度の適用を調整すること、ならびに両国での保険期間を通算してそれぞれの国における年金の受給権を確立することにより、これらの問題を解決することを目的としており、この協定により、派遣期間が 5年以内の一時派遣被用者等は、原則として、派遣元国の年金制度および医療保険制度にのみ加入することとするものです。

 日米社会保障協定によれば、社会保障は原則として、就労している国のみで加入します。例えば、米国で就労して給与所得が発生すれば、連邦社会保障法(Federal Insurance Contribution Act : FICA)に基づいて、米国でソーシャル・セキュリティー税およびメディケア税(Social security taxes and Medicare taxes)が給与所得に課せられます。現在、ソーシャル・セキュリティー税は従業員、雇用主それぞれが給与の6.2%、メディケア税は1.45%となっています。

 

1.日本から米国で就労する場合
 日本の企業から米国にある企業へ派遣・出向されるなどにより、本来であれば日米両国の年金・医療保険制度に加入する義務が生じる場合でも、いずれか一方の国の年金・医療保険制度に加入すればよいこととなります。
 日本の企業から短期間(5年以内と見込まれる場合)米国にある企業へ派遣される場合は、「適用証明書」の交付を受けることで、日本の年金・医療保険制度にのみ加入することとなります。
 米国の年金・医療保険制度への加入が免除されるためには、日本の事業主を通じて、管轄の社会保険事務所において「適用証明書」の交付を受ける必要があります。
 また、米国の年金・医療保険制度にのみ加入する場合は、日本の事業主を通じて、管轄の社会保険事務所や健康保険組合に、日本の年金保険や医療保険の「資格喪失届」を提出する必要があります。

2.米国から日本で就労する場合
 米国にある企業から短期間(5年以内と見込まれる場合)日本の企業に派遣される場合は、米国社会保障庁(Social Security Administration)での手続が必要となりますので、米国の事業主に相談してください。

 

 ここで、日米税制上の違いとして、社会保険料控除の取扱いがあります。日本では、支払った社会保険料は社会保険料控除として、全額所得控除できます。

 これに対して米国では、日本の年金保険料にあたるソーシャル・セキュリティー税や老齢者・障害者向け医療保険料であるメディケア税は、給与支払時に源泉徴収されますが、その金額を項目別控除(Itemized Deductions)として課税所得から控除することはできません(401kプランやIRAなど、退職プランへの拠出は控除可能できます)。この点だけからみても、日本の社会保険制度は他国に比べて優遇されていることがわかります。

2019年

1月

10日

日米租税条約の適用・解釈について

 日米租税条約とは、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」のことをいいます。条約とは、文書による国家間の合意であり、日本国憲法が国際協調主義(98条2項)を建前としていることから、条約は法律に優位することになります。

 日本の憲法は73条3号ただし書、61条で国会の承認を条約の成立要件に加えており、7条8号の批准も行われていることから、国内的にも国際的にも下記のとおり条約の効力は有効になっています。

  • 平成15年11月6日 ワシントンで署名
  • 平成16年3月19日 国会承認
  • 平成16年3月30日 東京での批准書の交換
  • 平成16年3月30日 公布及び告示(条約第2号及び外務省告示第113号)
  • 平成16年3月30日 効力発生

 以上のことから、租税条約の各規定は国内税法に優先して適用されることが原則とされています。租税条約には、国内税法と異なる所得区分を定め、独自の源泉地規定を設定したり、条約では特別に規定されていないものもあります。

 よって、国内税法に加えて租税条約の各規定の検討が非常に重要になってきます。条約の文言が一般的・抽象的であって、個別的・具体的な適用・解釈が不明確な場合には、財務省・国税庁から公表されている各種ガイダンス・租税条約届出書様式等を参考にして条約の文言上の解釈を明らかにしていくことになります。

 また、この条約は原則としてOECDモデル租税条約を基調としていることから、同条約についてのコメンタリーも解釈の参考となりますし、租税条約は相手国との相互関係に基づくものですから、米国財務省(Department of Treasury)の公式指針等も同様です。

 なお、日本では租税条約を実施するため、関連法令として下記のとおり法律、政令、省令が整備されています。

  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(条約実施特例法)
  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令(条約実施特例法施行令
  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令(条約実施特例法省令

2018年

8月

10日

米国申告書作成者番号(PTIN)について

 米国申告書作成者番号(Preparer Tax Identification Numberとは、米国で報酬を得て申告書を作成する者に要求される番号であり、すべての米国税理士(Enrolled agents)はこの番号を取得する必要があります。

 米国申告書作成者番号を取得するにあたっては、以下の情報が必要になります。

・社会保障番号(Social Security Number

・個人情報(名前、メールアドレス、誕生日)

・勤務先情報(名称、メールアドレス、電話番号)

・前年の所得税申告書(名前、住所、申告ステイタス)

・犯罪歴(あれば)

・所得税や法人税の滞納(あれば)

・適用される米国専門家情報(登録番号や所属、有効期間を含む公認会計士、弁護士、税理士、登録退職年金プラン、登録保険数理士、登録受入代理人州ライセンスの情報)

 また、米国で報酬を得て申告書を作成する者は、翌年申告書を作成する前に米国申告書作成者番号を更新する必要があり、米国税理士も同様です。更新に際しては、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)からメール通知がされますので、オンラインにより手続きを行うことが可能です。更新手続きは以下の3つのステップがあります。

1.アカウントにアクセスする

 既に登録済みのアカウントにアクセスします。

2.登録情報を更新する

・個人情報(名前、メールアドレス)

・勤務先情報(名称、メールアドレス)

・犯罪歴(あれば)

・所得税や法人税の滞納(あれば)

・適用される米国専門家情報(登録番号や所属、有効期間を含む公認会計士、弁護士、税理士、登録退職年金プラン、登録保険数理士、登録受入代理人州ライセンスの情報)

3.米国申告書作成者番号の更新確定

 これまでの内容に間違いがなければオンラインで更新の確定を行います。更新が確定されればその確定が通知されます。

 このように米国申告書作成者番号をオンラインで更新する場合には通常15分もあれば完了し、更新料は無料です。更新は紙によることも可能ですが、Form W-12を提出する必要があり、更新には4~6週間かかります。

2018年

7月

10日

米国の修正申告(Amended Return)について

 米国では、確定申告書を提出した後に誤りを発見した場合には、修正申告書(Amending Tax Return)を提出することによって訂正を行うことができます。

 米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)に対して修正申告書を提出するにあたっては、以下の10つの点に注意してください。

1.修正申告が求められるとき

 申請ステイタス、扶養家族数、所得総額、所得控除または税額控除を訂正する必要がある場合は、修正申告書を提出する必要があります。 米国個人所得税修正申告書(Form 1040X)には、修正する理由を記載する欄があります。

2.修正申告をしないとき

 確定申告書の修正をしないときには、場合によっては、確定申告書を修正する必要はありません。例えば米国内国歳入庁は通常、確定申告書をチェックして計算ミスを訂正します。もし必要な本表(Form)や別表(Schedule)が提出されていない場合、米国内国歳入庁から何が足りないかについて連絡が入ることになります。

3.修正申告をするとき

 Form 1040Xを使用して、以前に提出したForm 1040、1040A、1040EZ、1040NRまたは1040NR-EZを修正します。 この場合、Form 1040X修正する課税年度にチェックを入れます。修正申告書は電子申告することはできず、用紙に記入して提出する必要があります。

4.複数年にわたる修正をするとき

 修正申告書を複数年にわたって提出する場合は、1年ごとにForm 1040Xを別途用意してそれぞれ適切な米国内国歳入庁の処理センターに別の封筒で郵送してください。提出先は米国内国歳入庁の処理手順書に記載されています。

5.Form 1040Xについて

 Form 1040Xには3つの記入欄があります。 A欄は元の確定申告書の数値を示します。 B欄には修正内容(A欄とB欄の差額)が表示されます。 C欄は修正後の数値が示されます。また、修正内容と修正理由を説明する記入欄もあります。

6.その他の本表や別表(Forms or Schedules

 変更内容に他の別表や本表が含まれている場合には、Form 1040Xに添付してください。 これをしないと、処理が遅れることになります。

7.他の還付のための修正申告

 他の還付のための修正申告をしている場合には、その還付金を受け取った後でなければ修正申告書を提出してはいけません。

8.過少申告のための修正申告

 過少申告のため修正申告書を提出する場合には、利子税や加算税がかかるため、できるだけ早くForm 1040Xを提出して、税金を支払う必要があります。

9.修正申告ができる期間

 還付を請求するには、通常、元の確定申告書を提出した日から、または税金を支払った日から2年以内のいずれか遅い日から3年以内に、Form 1040Xを提出する必要があります。
10.処理日数
 修正申告書の通常の処理には、8〜12週間かかります。

 これに対して日本では、確定申告書の訂正についてケースごとに2つの手続きが存在します。納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合には、「更正の請求」を行います。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。また、納める税金が少なすぎた場合や還付される税金が多すぎた場合には、「修正申告」を行います。

2018年

6月

10日

米国の損益通算ルールについて

 米国には、税務上申告する年度に発生した他の所得と損益通算できる損失制限について①受動的活動のルール(Passive Activity Rules)と②危険負担のルール(At-Risk Rules)の2つのルールが存在します。

 ①受動的活動のルールは、納税者が実質的に参加していない(not materially participate)事業活動に適用されます。この場合における納税者は、単に投資から得られるリターンのみを期待している投資家のことをいいます。納税者が実質的に参加していない事業活動は税務上受動的活動とされ、賃貸活動は、不動産業者でない限り受動的活動とみなされます。このルールは、個人(individual)および閉鎖会社(closely held corporation)、人的役務提供法人(personal service corporation)に適用されます。

 ここで、閉鎖会社とは個人的所有会社のことであり、5人以下の株主で株式の50%超を保有している小規模な法人のことをいいます。また、人的役務提供法人とは、従業員株主が人的役務(医療、法務、技術、設計、会計、保険数理、芸術、コンサルティング)を提供する法人のことをいいます。

 受動的活動のルールは、受動的活動以外の所得と受動的活動の損失の相殺を制限するルールであり、換言すれば受動的活動の損失は受動的活動の所得としか相殺できません。他の受動的活動の所得と相殺できなかった損失は、翌年度以降に繰り越すことは可能です。

 ここで、受動的活動以外の所得とは、給与所得といった能動的所得(active income)や利子所得、配当所得、ロイヤルティ所得といった投資関連所得(portfolio income)のことを指します。このように米国では税務上、所得は投資関連所得、能動的所得、受動的所得の3区分に分類されています。

 ②危険負担のルールは、事業や投資活動から生じた損失の控除は、負担されたリスクの金額までしか控除できないというルールのことです。このルールは、個人および閉鎖会社に適用されます。

 例えば、米国には通常のC法人(C-corporation)と小規模なS法人(S-corporation)がありますが、S法人に100万円の投資をして、唯一の株主兼従業員である場合において、200万円の損失を被った場合であっても、その損失は他の所得と100万円までしか損益通算することはできません。ただし、損益通算できなかった損失は将来に繰り越すことは可能です。

 危険負担のルールは、事業活動における納税者の投資(investment)に関するものである一方、受動的活動のルールは事業活動における納税者の参加(participation)に関するものであり、相互に関連していますが、受動的活動のルールを適用する前に危険負担のルールを適用するという関係にあります。

2018年

5月

10日

US CPAライセンス・ホルダーのサインについて

 米国公認会計士(US CPA)全科目合格後にワシントン州公認会計士(US CPA in Washington State)や他州公認会計士のライセンス申請を行う場合、米国公認会計士ライセンス・ホルダー(US CPA Lisence Holder)の実務経験証明のサイン取得が必要になります。予備校のライセンス・サポートがある場合や監査法人に勤務して身近にライセンス・ホルダーがいる場合には問題はありませんが、そうでない場合には、全米州政府会計委員会(NASBA)の経験認証サービス(Experience Verification Service)があります。

 全米州政府会計委員会は、世界中の国内外の会計専門家が米国公認会計士資格情報を利用できるようにすることを目標にしており、多くのライセンス申請者は、ライセンス・ホルダーを見つけるのが難しいことから、このサービスは開始されました。

 全米州政府会計委員会の経験認証サービスは、ライセンス・ホルダーのインタビューにより、ライセンス申請者の実務経験の認証を行い、米国内外のライセンス申請者のニーズに対応する取り組みですが、比較的最近に開始されたサービスです。サインをしてくれる米国公認会計士を探す必要もないことや、全米州政府会計委員会のサービスですから、ライセンス申請後にOKが出るどうか心配する必要もありません。

 このサービスを開始するには、ライセンス申請者は次の条件を満たす必要があります。
①米国公認会計士
試験に全科目合格(
Passed the CPA Examination

②一定の学歴要件(Met the Board’s educational requirements for licensure

1〜2年の会計実務経験(1-2 years of accounting experience

 現在利用できる州は、グアム、ケンタッキー、ミシガン、ミネソタ、モンタナ、ニューハンプシャー、オクラホマ、ヴァージニア、ワシントン、ワシントンD.C.、ウィスコンシンですが、これらの州以外で合格した場合には、合格実績を上記の州へ移すために移管(Transfer)の申請を行う必要があります。

 日本人がサービスを利用するには700ドルかかります。サービスの流れは以下のとおりです。
 ①オンラインによる利用申請

 ②
現地のプロバイダーによる職務経験の確認
 ③ライセンス・ホルダー
の英語での電話またはスカイプインタビュー
 ④
総合的な最終報告書の作成

 その後は、この最終報告書と必要書類を州にオンラインで提出すれば、ライセンス登録されます。ライセンス登録者は、全米統一ライセンスサーチ(CPA Verify)に掲載され、名前もしくはライセンス番号を入力すると、ライセンス保持者かどうかの検索が可能になります。

 全米州政府会計委員会による認証を受けているため、ライセンス登録自体はすぐ行われますが、認証サービスはきちんとした手続きを踏んでおり、1カ月程度を要します。

2018年

4月

10日

日米の税金の支払い方法について

 国税は、申告した税額等に基づき納税者自身で納付の期限(納期限)までに納付する必要があります。米国も日本と同様、原則として税金の支払期日は申告期限と同じです。

 米国の税金の支払い方法は以下のとおりです。

1.銀行口座からの直接支払い(Direct Pay With Bank Account

 銀行口座からの直接支払いは、個人用として利用されています。

2.デビットカードまたはクレジットカード(Debit or Credit Card

 デビットカードまたはクレジットカードによる支払いは、金額に応じて手数料が設定されています。

3.電子連邦税金支払システム(The Electronic Federal Tax Payment System

 電子連邦税金支払いシステムは、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)に登録が必要になりますが、事業者や多額の支払い用に利用されています。

4.電子ファンド引き落とし(Electronic Funds Withdrawal

 電子ファンド引き落としとは、税務ソフトで電子申告を行うときにオプションとして設定されている方法です。引き落としは直接デビットか自分の銀行口座から行います。

5.米国銀行口座連邦税金支払い(Same-Day Wire Federal Tax Payments

 米国銀行口座連邦税金支払いとは、米国国内にある銀行口座からの引き落としを行う方法です。日本国内の銀行口座を使用することはできません。

6.小切手またはマネーオーダー(Check or Money Order

 小切手やマネーオーダーによる支払いは、日本国内から納付する場合は、利便性が高いため、利用頻度が高い方法です。小切手を使用する場合は、事前に米国に口座を作っておく必要があります。小切手やマネーオーダーを申告書と同封して、米国内国歳入庁に郵送することになりますが、米国では日本とは異なり、郵便事故も想定されるため、EMSで送達確認を行うことが推奨されます。

7.現金(Cash

 現金で米国内国歳入庁の事務所や契約された米国国内のコンビニで支払う方法です。日本国内のコンビニで支払うことはできません。 

 これに対して日本の税金の支払い方法は以下のとおりです。

1.ダイレクト納付(e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法)

2.インターネットバンキング(インターネットバンキングから納付する方法)

3.クレジットカード納付(国税クレジットカードお支払サイトを運営する民間業者に納付を委託する方法)

4.コンビニ納付(コンビニエンスストアの窓口で納付する方法)

5.振替納税(預貯金口座からの振替により納付する方法)

6.窓口納付(金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法)

2018年

3月

10日

米国の純投資所得税(Net Investment Income Tax)

 米国では、一定額以上の純投資所得がある場合、純投資所得税(Net Investment Income Tax)が課せられます。税率は3.8%であり、修正後総所得(modified adjusted gross income)が単身者であれば、200,000ドルまで、夫婦合算申告の場合には250,000ドルまでであれば税金はかかりません。
  一般的に純投資所得には、以下のものが含まれます。

・利息(Interest

・配当(Dividends

・資産売却益(Capital Gains

・賃貸・ロイヤルティ収入(Rental and royalty income
・不適格年金(Non-qualified annuities)

が含まれます。

 この中には、給与や自営業による収入は含まれません。また、失業手当や社会保障給付、離婚手当、居住用財産の特別控除額も含まれません。

 ただし、米国市民や米国居住者であれば、純投資所得税はかかりますが、米国非居住者であれば適用されないことになります。

 なお、申告には連邦所得税の申告時にForm 8960の提出が求められます。

 このように、米国では一定額以上の給与所得者や自営業者に対して、老齢医療保険税(Additional Medicare Tax)が課せられているのと同様に、純投資所得に対しても純投資所得税が課せられており、一定額以上の所得がある富裕層に対しての課税が強化されています。

2018年

2月

10日

米国公認会計士(US CPA)の登録について

 米国公認会計士試験は、FARAUDREGBECの4科目からなっており、これに全科目合格すると、いわゆる全科目合格者(Successful Candidate)となり、一般的に「米国公認会計士に合格した」というのはこの段階のことを指します。

 この時点では全科目合格者であって、資格を持っているわけではないため、資格として米国公認会計士を活用するためには、この時点から次の段階に進む必要があります。

 全科目合格の次に取得するのが、資格証明書(Certificate)です。基本的に、資格証明書と免許(License)は同時進行で取得することが多いのですが、そうでない場合もあります。

 米国は連邦制の国家であり、登録はそれぞれの州に対して行います。州によっては次の段階である免許を取得する前に、この資格証明書を取得することができることもあります。

 例えば、グアム州(Guam State)には、非活動(Inactive)というステイタスがあり、これは、米国公認会計士としての資格は証明されているが、活動はしていないという状態を指します。ただ、免許登録後に、活動を休止し、非活動のステイタスを選択するという方法もあります。このステイタスは米国公認会計士だけでなく、米国税理士(US EA)にも存在します。

 さらに、免許を取得するには、州に免許登録を行う必要がありますが、通常は、資格証明書とともに免許を付与するという州がほとんどです。免許登録するには、一定の要件を通過する必要がありますが、州によっては比較的簡単な要件しか課していないところもあります。

 例えば、免許登録の要件のひとつに「米国での監査経験」を要求している州が多いのですが、ワシントン州(Washington State)は、米国以外の経理やコンサルティングなどの経験でも免許を申請することができ、一般企業の日本人は通常監査経験を積むことができないため、ワシントン州で免許登録を行うことが一般的な流れです。

 通常の手順としては、以下のような流れとなります。

①ワシントン州に対しての学歴審査依頼
②合格実績のTransfer依頼(他州の合格実績をワシントン州へ移転)

AICPA Ethics Exam取り寄せ・答案提出
④ワシントン州指定の倫理試験(Ethics Exam回答

⑤ワシントン州へ免許申請
 また、申請の際には、5年間活動中(Active)の社外の米国公認会計士のサインが必要となります。他州では直属の上司のサインが求められることもあります。

 なお、米国公認会計士試験に合格してから4 年以上経過後の免許申請の場合は、申請直近3年間でワシントン州の要求する継続教育(CPE)を行ったことを証明しなければなりません。

 ワシントン州では申請者に対して、一定の割合でサンプルし、申請内容に虚偽がないか等を調査しており(ライセンス監査)、ライセンス監査の対象者になった場合は、追加資料の提出が必要になる場合もあります。

2018年

1月

10日

米国税理士(US EA)の更新について

 米国税理士(EA)の登録には実務経験は不要ですが、登録後、3年毎の更新が義務付けられており、更新時にはForm 8554を提出しなければなりません。

 Form 8554の提出は、郵送による方法と、Pay.govによりクレジットカードやデビットカードを使用して電子申告をする方法とがあります。

 米国税理士の更新に際しては、申告書作成者番号(PTIN)を更新しておくことが前提となり、3年間で72時間(最低年間16時間)の継続教育(CPE)を受講するとともに、毎年2時間の倫理教育が必要になります。

 活動ステイタス(Active Enrolled Agent status)ではなく、非活動ステイタス(Inactive Enrolled Agent status)を選択することもできますが、米国で報酬を得て申告書を作成することはできず、更新にかかる費用はステイタスにかかわらず67ドルかかります。

 単位の取得の方法には、

①開催されているセミナーに参加する。
②米国・内国歳入庁(IRS)より認められた通信教育により単位を取得する。
といった方法がありますが、主に利用されているのが通信教育です。通信教育にはIRSが指定した業者(IRS-Approved Continuing Education Providers)を利用します。

 実務で一番使用するのは、米国税法の手引書(Publication)です。この手引書に沿って書類を作り、段取りを組まないといけません。指定された業者は様々で、金額や教育内容が異なるため、米国税法の手引書を利用できる教育かどうかは業者選択のポイントの一つになります。

 日本では、会社が年末調整で年間の総税額を見直し源泉徴収で調整を行うため、ほとんどの給与所得者は自分で確定申告をする必要がありません。これに対して米国では、給与所得者、自家営業者、投資所得のあった人など、収入のあった人は原則としてすべて確定申告書を作成して連邦IRSと州の税務当局の両方に毎年申告期日までに提出しなければなりません。

 源泉課税を基本とする日本の税制とは異なり、米国では給与所得以外の利子、配当、不動産賃貸等の所得も損益通算し確定申告する総合課税方式を採用しています。この方式は、申告する側にとっても、また、その処理を行う連邦及び州政府にとっても時間を要する複雑な手続きですが、納税者が投資内容の選択により税額を操作できるという柔軟性も持ち合わせています。

 このように米国税務は、日本税務以上に複雑なものであるため、専門家に対する継続教育の必要性もまた日本と同様に不可欠のものとなっています。なお、日本の税理士には、更新制度はありませんが、継続教育の制度(罰則なし)は存在します。

2017年

12月

10日

日米の居住者に係る外国税額控除

 日本の居住者は、所得の生じた場所が国内であるか、国外であるかを問わず全ての所得について日本で課税されますが、外国で生じた所得について外国の法令で所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)の課税対象とされる場合、日本及び外国の双方で二重に所得税が課税されることになります。
 この国際的な二重課税を調整するために、居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税の額をその納付することとなる年分の所得税の額から差し引くことができます。これを「居住者に係る外国税額控除」といいます。

 居住者に係る外国税額控除は、米国所得税を納付することとなる日の属する年分において、日本の税法において課されるべき所得税額について、その年分の所得総額に対する調整国外所得金額に対応する部分の金額を限度として居住者に係る外国税額控除を認めるものです。

 しかしながら、国外源泉所得が生じた年とその国外源泉所得に係る外国所得税を納付することとなる年が常に一致するとは限りません。このように、国外源泉所得の発生年と外国所得税の納付年とにずれが生じ得ることを踏まえ、控除対象外国所得税の額と所得税の控除限度額との差額のうち一定額を翌年以降3年間繰り越すことのできる外国税額控除の繰越控除が設けられています。

 これに対して、米国では、外国税額控除(Foreign Tax Credit) は、1年間の繰り戻し(Carry back)と10年間の繰り越し(Carry over)ができます。繰り戻しとは、その年に使えなかった外国での税金(Unused Foreign Tax)をあたかもそれ以前の年に払ったかのように扱うことです。また、使えなかったクレジットは繰り越すこともできます。

 繰り戻しと繰り越しは、最初に繰り戻しを計算し、繰り戻しが可能ならそちらを先に使います。繰り戻しができなかったり、繰り戻ししてもまだ使っていないクレジットが残る場合、それ以降の年に繰り越していきます。

 Foreign Tax Credit の申請には 原則として、Form 1116 の提出が必要です。また、繰り戻しの場合には、過去に遡るのでForm 1040Xによる修正申告(Amended Tax Return)が必要になります。

 このように、外国税額控除は日本では繰越控除しかできないのに対して、米国では繰戻控除が認められており、二重課税の解消の程度が高くなっています。

2017年

11月

10日

米国の州政府の所得税について

 米国では、連邦政府と州政府の二つの政府が存在するために、所得税も、連邦政府と州政府へ別々に申告納付する義務があります。これは、個人でも法人でも同じことです。米国の居住者は、全ての総所得から、種々の控除を差し引いた課税所得に対する税金を連邦政府(IRS)に納付する義務があります。また、州政府にはその州で発生した所得に対して、州所得税を納付する義務があります。

 現在、個人所得税納付の義務がない州は、アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコダ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7つの州となっています。また、ニューハンプシャーとテネシーの2州では、投資所得(例えばキャピタル・ゲイン)だけが課税対象になっています。その他の州は州所得税を申告納付する義務があります。

 すべての所得には、当事者の居住地に関係なく連邦所得税が課せられます。州所得税がない州に居住していても同様です。州所得税や地方自治体所得税については、それぞれの税制によります。

 一方、勤務州と居住州が異なる場合の所得税は、当事者本人が「居住者」であるか「非居住者」であるかを州財務省に申告する必要があります。

 例えば、勤務地がニューヨーク州で居住地がニュージャージー州の場合、勤務地に対しては「非居住者」として給与所得を課税対象所得として申告し、居住州に対しては「居住者」として申告します。その際、居住州には、内国歳入庁(IRS)に申告した所得額を報告し、それと同時に、勤務州で納税した額を「他州税額控除」として申告することで控除を受けることになります。