2021年

9月

10日

法人税法上の寄附金と高額譲受について

 法人税法上の寄附金とは、法人が行った金銭その他の資産又は経済的な利益の供与又は無償の贈与をいい、社会通念上の寄付金の概念よりその範囲は広くなっています(37条)。 

 法人税法上の寄附金は、金銭で贈与した場合には、その金銭の額で計算し、金銭以外の資産の譲渡や経済的な利益の無償の供与の場合には、その贈与や供与の時における時価で計算することとされています(同条7項、8項)。例えば、親子会社間のように特別な関係にある者が時価より低い価額で資産の譲渡を行ったような場合で、ぞの差額が実質的に贈与したと認められるときは、その差額で計算します。

 法人が各事業年度において支出した寄附金の額の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとされています(同条1項)。

 普通法人に適用される一般の寄附金の損金算入限度は、次に掲げる①資本金基準額と②所得基準額の合計額の4分の1に相当する金額として計算され、この限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法施行令73条1項)。

① 当該事業年度終了の時における資本金等の額(当該資本金等の額が零に満たない場合には、零)を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の1,000分の2.5に相当する金額

② 当該事業年度の所得の金額の100分の2.5に相当する金額

 ここで、法人が資産を高額で譲受けた場合には、低額譲渡と異なり、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについては、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていません

 しかし、東京地裁(令和元年10月18日)は、不動産業を営む法人が他の法人から時価を超える価格で購入した土地を売却し、購入価額全額を売上原価として損金に算入した場合において、法人税法37条7項及び8項の規定の解釈に基づいて、法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」は「寄附金の額」に該当することになるので、損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないとしています。

 そして、当該対価の額と当該資産の時価との差額について、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、損金の額への算入が制限されることとなり、そのような扱いを受ける当該差額は、当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「売上原価」とは異質なものといわざるを得ず、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきものとしています。

2021年

8月

10日

棚卸資産の評価損について

 棚卸資産とは、商品、製品その他の資産で棚卸しをすべきもの(有価証券及び短期売買商品を除く。)をいいます(法人税法2条20号)。この棚卸しをすべきものとは、販売のために保有される物品や販売を目的とする製品の製造のために使用される物品をいいます。 

 法人が所有する棚卸資産の時価が帳簿価額を下回った場合に、その棚卸資産の評価替えをしてその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分について棚卸資産の評価損が発生します。会社法及び会社計算規則では、資産の評価は取得原価主義を原則としながら、株主、債権者及び利害関係人の保護を目的とする保守主義の原則から、未実現の損失を積極的に認識させ、企業利益に反映させることとしています。

 これに対して法人税法は、資産の評価換えに基づく課税所得の恣意的調整の防止等を考慮する立場から、あくまで取得原価主義を適用することを原則としており、資産の評価換えによる評価損は、災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合などを除き、原則として 損金の額に算入しないこととしています(33条1項)。

1.法人税法

(資産の評価損の損金不算入等)

第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。       

2.法人税法施行令

 法人税法第33条第2項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。

一 棚卸資産 次に掲げる事実

イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。

ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。〔法人税法基本通達9-1-4〕

ハ イ又はロに準ずる特別の事実〔法人税法基本通達9-1-5〕

3.法人税法基本通達

(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)

9-1-4 法人税法施行令第68条第1項第1号ロ(評価損の計上ができる著しい陳腐化)に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。

(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。

(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)

9-1-5 法人税法施行令第68条第1項第1号ハ(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。

(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)

9-1-6 棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、法人税法施行令第68条第1項第1号(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に掲げる事実に該当しないことに留意する。

2021年

7月

10日

吸収合併の会社法手続及び届出について

1.合併の概要

 合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体することをいいます。会社法上、合併は吸収合併と新設合併に分けられます。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます(同条28号)。

 合併による解散は、消滅会社が解散とともに清算手続を経ないで直ちに消滅する点で、会社が事業活動を停止し、会社を清算する場合の原則的な清算手続による解散の場合と異なります。実務上は、新設合併の場合、事業について主務官庁の免許・許可の再取得や再度の株式の上場手続が必要となるため、対等合併であっても吸収合併の方法を選択することが多くなっています。

2.吸収合併の手続

(1)会社は、他の会社と合併をすることができますが、合併をする会社は、合併契約を締結しなければなりません(748条)。

(2)合併をする会社は、合併契約に関する書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(782条(会社規則182条)、794条(会社規則191条))。

(3)合併をする会社は、株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません(会社法783条1項、309条3項2号)。

① 存続会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法784条1項本文)。

② 消滅会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法796条1項本文)。

 ただし、消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続会社の譲渡制限株式である場合であって、存続会社が公開会社でない場合には、株主総会の決議を省略できません(同項ただし書)。 

 また、存続会社において、承継させる資産の額(簿価)が、分割会社の純資産額(会社規則187条)の5分の1以下(定款で厳格化することができます)の場合には、差損が生じる場合(796条2項ただし書、795条2項)を除いて、株主総会の決議が不要になります(会社法784条2項)。

(4)株式会社は、会社債権者異議手続の対象となる債権者がいる場合には、一定事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催促しなければなりません(789条2項、799条2項)。

(5)会社債権者異議手続が終了していないとき又は吸収合併を中止したときを除き、存続会社は合併契約で定められた合併の効力発生日(749条1項6号)に消滅会社の権利義務を承継します(750条1項、6項)。

(6)存続会社は、合併契約に関する事項を記載した書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(801条、会社規則200条)。

(7)会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併により存続する会社については変更の登記をしなければなりません(会社法921条)。

3.届出

 合併当事会社は、以下の届出が必要です。合併により被合併法人は消滅するため、被合併法人の届出書は、合併法人が提出します。

(1)法人等の異動(変更)届出書

 ① 合併法人

   届出書:異動事項「合併(新設・吸収・適格・その他)」に所要事項を記載する。

   提出先:合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所

 ② 被合併法人

   届出書:異動事項「解散」に合併により消滅と記載する。   

   提出先:被合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所 

(2)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

   提出先:被合併法人の所轄税務署  

(3)給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届

   提出先:被合併法人の異動従業員の1月1日現在の住所地の区役所・市役所   

(4)合併による法人の消滅届出書(被合併法人が消費税課税事業者であった場合)

   提出先 :被合併法人の所轄税務署

2021年

6月

10日

連結納税における合併と清算について

1.連結納税の合併と清算

 連結納税とは、親法人とその親法人による完全支配関係があるすべての子法人を一のグループとして、親法人がそのグループの所得(連結所得)の金額等を一の申告書(連結確定申告書)に記載して法人税の申告・納税を行う制度です。

 連結納税を採用している企業グループで、連結子法人を解散する場合において、合併する場合と清算する場合で会社法及び法人税法の取り扱いが異なります

2.会社法の解散事由

(1)通常の解散

 株式会社が、会社法471条(解散の事由)第1号、第2号及び第3号に規定する事由により解散する場合においては解散の登記の完了をもって解散し、同時に清算手続に入り、清算の結了によって消滅することになります(476条)。解散の登記は、解散する株式会社の第三者に対する対抗要件であるとともに、その解散自体についての要件です。

(2)合併による解散

 株式会社が、会社法471条第4号に規定する事由により解散する場合においては、合併によって消滅する株式会社の権利義務は、合併後存続する株式会社又は合併により設立される株式会社に包括承継され、清算行為を必要としないものですから、合併によって消滅する組合は解散登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります。

(3)破産手続開始の決定による解散

 株式会社が、会社法471条第5号に規定する事由により解散する場合においては、破産手続開始の決定により裁判所の監督下に入ることとなり、破産手続により破産管財人によって残務が処理され、清算行為を必要としないものですから、当該株式会社は解散及び破産終結の嘱託登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります(破産法35条)。

3.法人税法(連結納税)の取り扱い

(1)みなし事業年度

 合併の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から合併の日の前日までの期間(法人税法14条1項10号)であり、最終事業年度は、合併の日の前日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 清算の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間(14条1項10号)であり、最終事業年度は、残余財産の確定の日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 連結法人としての単体申告は、連結法人としての取扱いのうち一部が適用れます。

(2) 資産の移転

 合併の場合、100%親子間の合併は適格合併であるため、簿価による譲渡となります(2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)。

 清算の場合、資産の処分損益が益金・損金に算入されます。

(3)債務免除益

 合併の場合、債務免除益は計上されません

 清算の場合、債務免除益が益金に算入されます

(4)繰越欠損金

 合併の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

 清算の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

(5)特例欠損金

 清算の場合、会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入が認められます(法人税法81の3条、59条2項3項)。

(6)欠損金の繰戻還付

 どちらの場合でも、一部の例外を除いて連結欠損金及び単体欠損金の繰戻還付は適用できません(80条1項4項、81の31条1項4項)。 

2021年

5月

10日

連結子法人が合併により解散した場合の取り扱い

 連結親法人が連結子法人を吸収合併した場合には、その資産等の引き継ぎ等については、原則として単体納税における合併と同様の取り扱いを受け、通常は100%親子会社間合併のため適格要件を満たし(法人税法2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)、適格合併として処理されます(法人税法62の2条、67の7条1項)。 

 連結子法人の合併による解散があった場合には、その合併の日において、その連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4項)。

 また、連結子法人が連結事業年度の中途において合併により解散した場合には、みなし事業年度が生ずることとなり(14条1項9,10号)この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の2条1項2号)。

 したがって、当該連結子法人は合併した日の前日の属する連結事業年度開始の日から合併の日の前日までのみなし事業年度について、連結法人として単体申告を行うこととなります。なお、合併日の前日が連結事業年度終了日である場合には、合併日の前日までは連結事業年度となり、連結申告を行うことになります(15の2条1項かっこ書)。

 「連結法人としての単体申告」とは、連結納税の承認は有効であっても他の連結法人と申告の時期が異なることからその法人単体で申告することをいい、単体申告であっても連結法人としての取り扱いのうちの一部が適用されます。例えば、連結申告特有の所得の合算等は適用されませんが、連結納税グループ内の金銭債権に対する貸倒引当金の繰入は不可とする規定などは適用されることになります。

 最後事業年度に当該連結子法人に所得が発生した場合には、当該連結子法人の連結欠損金個別帰属額を単体納税の繰越欠損金とみなして繰越控除を行うことができますが(57条6項)、他の連結法人の連結欠損金個別帰属額を控除することはできません。また、連結子法人で最後事業年度に欠損が発生した場合には、その欠損金額を合併の日の属する連結事業年度において合併法人である連結親法人の損金に算入することができます(81の9条4項)。

 連結納税中に繰り延べた譲渡損益がある場合には、完全支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合を除き、それを計上しなければなりませんが(61の13条3項)、当該連結子法人が関税支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合には、譲渡損益は合併法人である連結親法人に引き継がれ、被合併法人である連結子法人において譲渡損益の戻し入れは行わず、合併法人において譲渡等が実現するまで繰り延べることになります(61の13条3項1号)。

 解散が合併又は破産手続開始の決定による解散ではない場合には、連結子法人の連結納税の承認が取り消されることはなく、また、みなし事業年度が生じないことから、連結親法人は、解散日を含む連結事業年度において、連結子法人の個別益金額又は個別損金額などを含めて連結確定申告を行うこととなります。連結子法人の残余財産の確定があった場合には、その残余財産の確定の日の翌日において、連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4号)。

 連結子法人の連結事業年度の中途において残余財産が確定した場合には、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間について、みなし事業年度が生ずることとなり(141条10号)、この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の21条2号)。

 連結子法人が吸収合併により消滅した場合、当該連結親法人は、「連結完全支配関係を有しなくなった旨を記載した書類」を遅滞なく、所轄税務署長に提出しなければなりません。

2020年

8月

10日

法人税法及びこれに関する法令・通達について

 税法は、税の納付に関する国と国民との間の法律関係を規律する公法です。国の行う課税処分等は、民事上の法律行為とは異なり、行政処分ですから、行政法の一般理論が適用されます。また、税は、その課税対象が国民の経済活動に求められるものであることから、税法は、他の多くの私法、中でも民法、商法、会社法に大きく関係しています。

 法人税法は、企業活動から生まれる所得をその課税対象としているため、商法及び会社法と深い関連があり、収益などについての計算規定で会社法と食い違う部分については、調整が図られています。

 法人税法は、納税義務者、課税標準、税率、申告、納付等について5編163条までの条文で以下のように構成されています。

 第1編 総則(第1条~第20条)

 第2編 内国法人の法人税(第21条~第135条)

 第3編 外国法人の法人税(第138条~第147条の4)

 第4編 雑則(第148条~第158条)

 第5編 罰則(第159条~第163条) 

 法人税に関する法令は、法人税法以外にも、法律の委任により又はこれを実施するために法人税法施行令(政令)、同法施行規則(省令)があり、これらが一体となって法人税法を形成しています。

 さらに、法人税法の特例として、政策的な配慮に基づく課税上の特例が租税特別措置法に設けられ、また、これらの法令の解釈や適用に関して、数多くの取扱通達が国税庁において定められています。なお、この他に各税法に共通な事項は国税通則法に規定されています。 

法人税法ーーーー法人税法施行令(政令)ー法人税法施行規則(省令)

                    —減価償却資産の耐用年数に関する省令

・租税特別措置法ー租税特別措置法施行令ーー租税特別措置法施行規則

・国税通則法ーーー国税通則法施行令ーーーー国税通則法施行規則 

 租税特別措置法は、税法の一般的な規定とは別に、特殊な場合の課税制度を定めており、この法律は、経済政策や社会政策上の見地から、一般の税法による課税の場合よりも税負担が軽く、又は重くなるような課税の特例を定めたものです。その中には、直接税だけに限らず、間接税も含まれていますが、主要なものは所得税と法人税の特別措置です。これらの特別措置は、そのほとんどが2年ないし3年の期間に限られたものですが、情勢によってその期間の更新が行われています。

 法人税関係の取扱通達としては、法人税基本通達、耐用年数の適用等に関する取扱通達、租税特別措置法関係通達(法人税編)があり、いずれも公表されています。これらの通達は、国税庁長官が国税局長に対し、法人税関係法令の解釈や適用に当たっての取扱いを指示したものです。職員はその取扱いに即して処理することが義務とされていますが、納税者までをも拘束するものではありません。しかし、実務上は、税務当局の解釈や取扱いが確認できること等から、その指針として重視されています。

 法人税法は、所得税法と比べて次のような特色があります。

① 所得の計算

  所得税法ー所得をその源泉により10種類に区分

      ー区分された所得の種類ごとにそれぞれ算出方法を規定

  法人税法ー所得の種類を区分せず、所得の算出方法も必要な事項の全てを規定せず

      ー相当部分を適正な企業会計の慣行に委ねている

      ー会社法や一般に公正妥当な会計処理の基準によって計算した企業利益を前提

② 所得の計算期間

  所得税法ー暦年を基準

  法人税法—法人が定款等によって定めた会計期間(事業年度)を基準

③ 税率

  所得税法ー超過累進税率

  法人税法—原則として単一税率

 (参考)国税庁 税大講本「税法入門」「法人税法」

2020年

7月

10日

解散法人の会社法手続について

1.解散・清算の概要

 会社とは、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいい(会社法2条1号)、会社は法人とされます(3条)。

 解散とは、会社の法人格の消滅を来たすべき原因となる事実をいい、清算とは、会社の法人格の消滅前に、①会社の現務を結了し、②債権を取り立て、債権者に対し債務を弁済し、③株主に対し残余財産を分配するなどの手続をいいます。

 解散に続いて、法律関係の後始末をする手続である清算が行われます。会社の法人格は、合併の場合以外については、解散により直ちに消滅するのではなく(476条、645条)、解散後に行われる清算・破産手続の完了の時に消滅します

 清算の目的は、会社のすべての権利義務を処理して残余財産を株主に分配するところにあり、会社は事業を継続することはできませんし、事業を前提とする諸制度や諸規制は適用されません。

 清算手続中の会社を清算株式会社といい、清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(476条)。清算株式会社は、解散前の会社と同一の会社がそのまま継続し、ただその権利能力の範囲が清算を目的とするものに縮小されると考えられています。

2.解散

 株式会社は、株主総会の決議(特別決議309条2項11号)により解散します(471条3号)。株式会社は、事業の全部を譲渡しても当然には解散せず、解散をするためには解散の株主総会の決議が必要です。

 株主総会の決議により解散した場合、代表清算人は2週間以内に、その本店の所在地において、解散の登記をしなければなりません(926条)。解散により、株式会社は、合併及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除いて、清算をしなければなりません(475条1項1号)。

3.清算

⑴ 清算の種類

 清算は、株主及び会社債権者の利害に関係するため、法定の手続きによることを要します(法定清算)が、持分会社のうち合名会社及び合資会社は、社員間に人的信頼関係があり、かつ、社員が解散後も債権者に責任を負うことから(673条)、任意清算が認められています(668条以下)。法定清算は、裁判所の監督に属さない通常清算(475条~509条)と、裁判所の監督に服する特別清算(510条~574条)に分けられます。特別清算は、実質的に破産と並ぶ倒産処理方法の一種です。

⑵ 清算人

 清算株式会社では、株主総会や監査役はそのまま存続しますが、取締役はその地位を失い、清算人がこれに代わることになり、清算事務は清算人が行います。なお、株式は、解散後も自由に譲渡することができます。

 清算人は、定款で定める者又は株主総会の決議によって選任された者がある場合を除いて、解散時の取締役がそのまま清算人になります(法定清算人478条1項1号)。清算人に任期はなく、清算人の地位は、取締役とほぼ同じです(491条)。

⑶ 清算事務

 会社法は、清算人の職務権限として、①現務の結了、②債権の取立て及び債務の弁済、③残余財産の分配を挙げていますが(481条)、これらに限定されるわけではありません。ただし、清算株式会社の権利能力の範囲は縮小されて、清算の目的の範囲内にすぎなくなりますので、事業活動はできません。清算株式会社も、清算事務としてであれば、募集株式、募集新株予約権及び募集社債の発行をすることができますが、剰余金の配当(509条1項2号)や自己株式の取得(同項1号、3項)をすることはできません

 現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済の結果、残余財産があれば、清算株式会社は、株主に対し、原則として持ち株数に比例して分配します。清算株式会社は、債務を弁済した後でなければ、残余財産を株主に分配することはできません(502条)。

⑷ 清算手続

 解散の時点で継続中の事務を完結し、取引関係も完結します。そして、弁済期の到来した債権を取り立て、金銭以外の財産は換価し、債務の弁済をしますが、債権者保護のため、債権申出期間内(499条)は債務の弁済が制限されます(500条、501条)。

 清算株式会社は、清算事務が終了したときは遅滞なく、会社規則150条で定めるところにより、決算報告を作成し(会社法507条1項)、清算人はそれを株主総会に提出して、その承認を受けなければなりません(同項3項、929条1号)。清算株式会社の法人格は、清算事務終了後、上記株主総会の承認を得たときに消滅します(476条参照)。また、清算人は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から10年間帳簿資料を保存しなければなりません(508条1項)。

2020年

1月

10日

解散法人の税務申告手続について

1.普通清算手続

 株式会社は、株主総会の特別決議により解散することになり(会社法472条4号)、この場合、引き続いて清算をしなければなりません(475条1号)。

 清算中の株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまで存続するものとみなされるので(476条)、従前の複雑な機関設置は行われず、通常は株主総会と代表取締役が横滑りした清算人が清算会社の機関となります(477条、478条)。

 清算人は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより解散日における財産目録及び貸借対照表を作成しなければならないこととされています(492条)。税務の場合は、上記の計算書類に加えて、損益計算書と株主資本等変動計算書も作成しなければなりません。

 清算会社は、解散後、遅滞なく、清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内に(2ヶ月以上の期間)その債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者(帳簿上認識できる債権者)には、各別にこれを催告しなければなりません(499条1項)。

 2.解散法人の事業年度

 会社が解散をした場合には、その事業年度開始の日から解散の日までを一つの事業年度とみなし(解散事業年度)、その後は解散の日の翌日から1年ごとの期間が清算中の事業年度(清算事業年度)となります(連結納税の適用を受けている場合を除きます)。また清算中の事業年度の途中で残余財産が確定した場合は、その事業年度の開始の日から残余財産の確定の日までが一つの事業年度(残余財産確定事業年度)となります。

 解散事業年度及び清算事業年度に係る確定申告書の提出期限は事業年度終了の日の翌日から2月以内となります。また確定申告書の提出期限の延長の特例の適用もあります。

 一方、残余財産確定事業年度に係る確定申告書の提出期限は確定した日の翌日から1月以内(その期間内に残余財産の最終分配が行われる場合には行われる日の前日まで)となり、期限延長の特例の適用はありません。

 3.解散法人の所得計算

 解散事業年度の所得金額は通常の事業年度と同じく益金の額から損金の額を控除した金額です。しかしながら、決算期間は12カ月未満となることが多いため、減価償却費など月割計算などが必要となる項目があります。また租税特別措置法で認められている特別償却や準備金の設定など適用できない制度があります。

 清算事業年度の所得金額は通常事業年度と同じく益金の額から損金の額を控除した金額となります。租税特別措置法上の準備金の設定など適用できない制度があります。

また、平成22年税制改正により会社解散における課税方式が財産法から損益法へ改正されています。

 残余財産確定事業年度の所得金額は清算事業年度と同じく益金の額から損金の額を控除した金額となります。解散法人の申告はこの残余財産確定事業年度の確定申告をもって終了しますので、引当金の繰入れができないなど清算事業年度と異なる部分もあります。また、事業税の損金算入については、翌年度が存在しないことから残余財産確定事業年度の事業税等の額はその年度の損金に算入することとなります。

2019年

12月

10日

連結納税の完全子法人株式等に係る受取配当等について

 連結法人が受けた完全子法人株式等に係る受取配当等は、100%の資本関係内での課税済利益の再配分であるため、その全額が益金不算入となります。連結納税における完全子法人株式等とは、支払を受ける配当等の額の直前に支払われた配当等の額のその支払に係る基準日の翌日から、その支払を受ける配当等の額のその支払に係る基準日まで継続して、連結法人がその配当等の額を支払う内国法人との間に完全支配関係を有する場合のその内国法人の株式等など一定の株式等をいいます(法81の45、令155の9)。

 ここでの配当等の計算期間とは、前回の配当等の支払に係る基準日(前回配当基準日)の翌日から今回の配当等の支払に係る基準日(今回配当基準日)までの期間をいいます(令155の9)。ただし、当該配当等がみなし配当(法24)である場合には、その支払効力発生日の前日において、その配当を支払う法人が受領する連結法人との間に完全支配関係がある場合、その株式等は完全子法人株式等に該当します(令155の9①かっこ書)。

 源泉徴収については、完全子法人株式等からの配当であっても特別扱いはされず、原則として20.42%の源泉徴収が必要になりますが、当該金額は所得税額控除の対象になります。

 ただし、法人(公益法人等及び人格のない社団等を除きます。)の株主等が、その法人の資本の払戻し(資本剰余金の額の減少を伴う株式に係る剰余金の配当のうち、分割型分割によるもの以外のものをいいます。)又はその法人の解散による残余財産の分配により金銭その他の資産の交付を受けた場合には、その金銭の額とその他の資産の価額の合計額が、その法人の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となった株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配とみなされ(みなし配当)、その部分だけが課税の対象とされます(所法251、所令611)。

 株主が資本剰余金の区分におけるその他資本剰余金の処分による配当を受けた場合、配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合を除き、原則として配当受領額を配当の対象である有価証券の帳簿価額から減額します(企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」。

 また、その他資本剰余金を原資とした剰余金の配当を受ける法人においては、資本金等の額の減少部分に対応する金額が株式の譲渡対価の額とされ、利益積立金額の減少部分に対応する金額(みなし配当の額が受取配当金とされます。ただし、株主側の税務処理は、支払通知書に基づいて、行うことができます。なお、払戻割合(資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額/前期末簿価純資産額)は、配当をした法人から株主に対する通知事項とされています(令119条の9②)。

2019年

10月

10日

連結法人税の個別帰属額の計算について

 連結親法人が国に納付する法人税について、各連結法人は、各連結事業年度の連結所得に対する法人税の負担額として帰せられ、又は法人税の減少額として帰せられる金額(連結法人税の個別帰属額)を計算する必要があります。この場合の負担額として帰せられ、又は減少額として帰せられる金額は、具体的には以下のように計算することになります。

 各連結法人の各連結事業年度の連結法人税の個別帰属額は、次の1又は2により計算することになります。

1.連結親法人の資本金の額又は出資金の額が1億円超の場合(法81の181)

(1) 個別所得金額がある場合

  連結法人税の個別帰属額=(個別所得金額×適用税率+加算調整額)-減算調整額

  又は減算調整額-(個別所得金額×適用税率+加算調整額)

(2) 個別欠損金額がある場合

  連結法人税の個別帰属額 = 加算調整額 - (個別欠損金額 × 適用税率 + 減算調整額)

 又は(個別欠損金額 × 適用税率 + 減算調整額) - 加算調整額

2.連結親法人の資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下である場合又は連結親法人が資本若しくは出資を有しない場合(法81の182)

 上記1の適用税率を「連結所得に対する法人税の額÷連結所得金額」とします。

 ただし、連結所得の金額がない場合の適用税率は、上記の場合の連結所得の金額のうち年800万円以下の金額に対して適用される税率となります。

 ここで、「個別所得金額」とは、個別帰属益金額(その連結事業年度の益金の額のうちその連結法人に帰せられるものの合計額)が個別帰属損金額(その連結事業年度の損金の額のうちその連結法人に帰せられるものの合計額)を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。

 「個別欠損金額」とは、個別帰属損金額が個別帰属益金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいい、その連結事業年度に連結欠損金額が生じる場合にはその超える部分の金額からその連結欠損金額のうちその連結法人に帰せられるものを控除した金額をいいます。

 また、「加算調整額」とは、連結留保税額の個別帰属額など一定の金額の合計額をいいます。

 「減算調整額」とは、所得税額控除額の個別帰属額、外国税額控除額の個別帰属額、連結欠損金の繰戻しによる還付を受ける金額の個別帰属額など一定の金額の合計額をいいます。

 

【連結所得の金額がある場合】

 資本金の額が1億円である連結親法人の個別所得金額が100万円、連結子法人B・C・Dの個別所得金額がそれぞれ100万円、△50万円、△20万円であったときのC社の連結法人税の個別帰属額は、以下のように計算します。

・連結所得金額:100万円+100万円-50万円-20万円=130万円

・連結所得に対する法人税の額:130万円×15.0%=19.5万円

・適用税率:19.5万円÷130万円=15.0%

・C社の連結法人税個別帰属額:△50万円×15.0%=△7.5万円 

 

【連結所得の金額がない場合】

 資本金の額が1億円である連結親法人の個別所得金額が100万円、連結子法人B・C・Dの個別所得金額がそれぞれ100万円、△150万円、△100万円であったときのC社の連結法人税の個別帰属額は、以下のように計算します。

・連結欠損金額:100万円+100万円-150万円-100万円=△50万円

・連結所得に対する法人税の額:0円

・適用税率:15.0%

・各連結法人の個別欠損金額の合計額:△150万円+△100万円=△250万円

・C社の連結欠損金個別帰属額:△50万円×△150万円/△250万円=△30万円

・C社の連結法人税個別帰属額:(△150万円-△30万円)×15%=△18万円

2019年

7月

10日

連結納税適用会社の税効果会計について

 連結納税制度において、連結納税親会社は、連結法人税の個別帰属額に関する書類を確定申告書に添付して提出するとともに、各連結納税子会社は、当該個別帰属額等を記載した書類を届け出ることとされています。

 このように、連結納税制度上、連結納税会社ごとに申告調整額が把握されることから、各連結納税会社の個別財務諸表においては、連結納税制度上の連結個別利益積立金額等に基づいて認識される財務諸表上の一時差異等に対して、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債並びに法人税等調整額を計算し、個別財務諸表に計上することとなります。

(1) 連結納税主体における税効果会計の適用

① 連結納税会社ごとに、財務諸表上の一時差異等に対して繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

② ①の各連結納税会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を合計するとともに、連結納税主体に係る連結財務諸表固有の一時差異に対して、当該差異が発生した連結納税会社ごとに税効果を認識し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

③ 繰延税金資産のうち、法人税及び地方法人税に係る部分については連結納税主体を一体として回収可能性を判断し、住民税又は事業税に係る部分については連結納税会社ごとに回収可能性を判断した上で各社分を合計する。回収が見込まれない税金の額については、連結財務諸表上、繰延税金資産から控除します。

(2) 連結納税会社の個別財務諸表における税効果会計の適用

① (1)①の財務諸表上の一時差異等に対して、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

② 法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産については、両税合わせて回収可能性を判断します。住民税又は事業税に係る繰延税金資産については、それぞれ区分して回収可能性を判断します。いずれにおいても、回収が見込まれない税金の額については、個別財務諸表上、繰延税金資産から控除します。

(3) 財務諸表上の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額

 住民税及び事業税に係る税効果は、連結納税制度が導入されていないため連結納税会社ごとに計算されます。一方、連結納税制度を適用する法人税及び地方法人税に係る税効果についても、連結所得及び連結法人税額を連結納税会社ごとに把握できるため、繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、連結納税会社ごとに計算されます。

 財務諸表上の一時差異として認識される金額は、連結納税制度を適用した場合であっても、法人税、地方法人税、住民税及び事業税について基本的に共通であるため、利益に関連する金額を課税標準とする税金の種類ごとに区分して計算する必要はありません。したがって、一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、従来どおり、法定実効税率を適用して計算します。ただし、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては、税金の種類ごとに行う必要があります。

(4) 欠損金に係る繰延税金資産の金額

 税務上の繰越欠損金は、次のとおり、税金の種類ごとに取扱いが異なるため、繰越欠損金に係る繰延税金資産の金額は、原則として、税金の種類ごとに次に示す税率を適用して計算する必要があります。

① 法人税及び地方法人税

  ・繰越欠損金

   連結欠損金個別帰属額(特定連結欠損金個別帰属額を含む)

  ・適用税率

   法人税率×(1+地方法人税率)/(1+事業税率(所得割+地方法人特別税))

② 住民税

  ・繰越欠損金

   連結欠損金個別帰属額(特定連結欠損金個別帰属額を含む。)

   控除対象個別帰属調整額

   控除対象個別帰属税額

  ・適用税率

   法人税率×住民税率/(1+事業税率(所得割+地方法人特別税))

 ただし、控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額については、住民税率/(1+事業税率)

③ 事業税

  ・繰越欠損金

   欠損金額又は個別欠損金額

  ・適用税率

  ・事業税率/(1+事業税率(所得割+地方法人特別税))

2019年

4月

10日

連結納税の繰越欠損金について

 連結親法人の連結事業年度開始の日9年平成30年4月1日以後に開始する連結事業年度において生ずる連結欠損金額については10年以内に開始した連結事業年度において生じた連結欠損金額がある場合には、その連結欠損金額に相当する金額は、その各連結事業年度の連結所得の金額の計算において、その連結欠損金額の損金算入前の連結所得の金額として一定の金額の50%連結親法人が中小法人等である場合など一定の場合には100%)に相当する金額(損金算入限度額)を限度として、損金の額に算入されます(法81の9①)。
 また、連結親法人又は連結子法人に係る次の金額など一定の金額は、連結事業年度において生じた連結欠損金額とみなされます(法81の9②)。

①連結親法人の最初の連結事業年度開始の日前9年以内に開始した各事業年度において生じた青色欠損金額等で一定の金額

②特定連結子法人(連結納税の開始又は加入において時価評価を要しないこととされる連結子法人)の最初の連結事業年度開始の日前9年以内に開始した各事業年度において生じた青色欠損金額等で一定の金額

③特定連結子法人(最初の連結事業年度開始の日の前日が連結事業年度終了の日であるものに限ります。)のその開始の日前9年以内に開始した各連結事業年度において生じたその特定連結子法人の連結欠損金個別帰属額

 例えば、連結親法人となるP社と、P社による完全支配関係を有する連結子法人となるS社が連結納税の承認を受けて連結納税を開始する場合、S社は連結納税の開始において時価評価を要しない法人に該当します。
 このとき、P社及びS社に連結納税を開始する前の事業年度において生じた青色欠損金額があるならば、P社の上記①に該当する青色欠損金額及びS社の上記②に該当する青色欠損金額は、連結事業年度において生じた連結欠損金額とみなされ、損金算入限度額の範囲内で連結所得の金額の計算において損金の額に算入されます。