2021年

9月

10日

法人税法上の寄附金と高額譲受について

 法人税法上の寄附金とは、法人が行った金銭その他の資産又は経済的な利益の供与又は無償の贈与をいい、社会通念上の寄付金の概念よりその範囲は広くなっています(37条)。 

 法人税法上の寄附金は、金銭で贈与した場合には、その金銭の額で計算し、金銭以外の資産の譲渡や経済的な利益の無償の供与の場合には、その贈与や供与の時における時価で計算することとされています(同条7項、8項)。例えば、親子会社間のように特別な関係にある者が時価より低い価額で資産の譲渡を行ったような場合で、ぞの差額が実質的に贈与したと認められるときは、その差額で計算します。

 法人が各事業年度において支出した寄附金の額の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとされています(同条1項)。

 普通法人に適用される一般の寄附金の損金算入限度は、次に掲げる①資本金基準額と②所得基準額の合計額の4分の1に相当する金額として計算され、この限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法施行令73条1項)。

① 当該事業年度終了の時における資本金等の額(当該資本金等の額が零に満たない場合には、零)を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の1,000分の2.5に相当する金額

② 当該事業年度の所得の金額の100分の2.5に相当する金額

 ここで、法人が資産を高額で譲受けた場合には、低額譲渡と異なり、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについては、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていません

 しかし、東京地裁(令和元年10月18日)は、不動産業を営む法人が他の法人から時価を超える価格で購入した土地を売却し、購入価額全額を売上原価として損金に算入した場合において、法人税法37条7項及び8項の規定の解釈に基づいて、法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」は「寄附金の額」に該当することになるので、損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないとしています。

 そして、当該対価の額と当該資産の時価との差額について、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、損金の額への算入が制限されることとなり、そのような扱いを受ける当該差額は、当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「売上原価」とは異質なものといわざるを得ず、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきものしています。

2021年

8月

10日

棚卸資産の評価損について

 棚卸資産とは、商品、製品その他の資産で棚卸しをすべきもの(有価証券及び短期売買商品を除く。)をいいます(法人税法2条20号)。この棚卸しをすべきものとは、販売のために保有される物品や販売を目的とする製品の製造のために使用される物品をいいます。 

 法人が所有する棚卸資産の時価が帳簿価額を下回った場合に、その棚卸資産の評価替えをしてその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分について棚卸資産の評価損が発生します。会社法及び会社計算規則では、資産の評価は取得原価主義を原則としながら、株主、債権者及び利害関係人の保護を目的とする保守主義の原則から、未実現の損失を積極的に認識させ、企業利益に反映させることとしています。

 これに対して法人税法は、資産の評価換えに基づく課税所得の恣意的調整の防止等を考慮する立場から、あくまで取得原価主義を適用することを原則としており、資産の評価換えによる評価損は、災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合などを除き、原則として 損金の額に算入しないこととしています(33条1項)。

1.法人税法

(資産の評価損の損金不算入等)

第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。       

2.法人税法施行令

 法人税法第33条第2項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。

一 棚卸資産 次に掲げる事実

イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。

ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。〔法人税法基本通達9-1-4〕

ハ イ又はロに準ずる特別の事実〔法人税法基本通達9-1-5〕

3.法人税法基本通達

(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)

9-1-4 法人税法施行令第68条第1項第1号ロ(評価損の計上ができる著しい陳腐化)に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。

(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。

(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)

9-1-5 法人税法施行令第68条第1項第1号ハ(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。

(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)

9-1-6 棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、法人税法施行令第68条第1項第1号(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に掲げる事実に該当しないことに留意する。

2021年

7月

10日

吸収合併の会社法手続及び届出について

1.合併の概要

 合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体することをいいます。会社法上、合併は吸収合併と新設合併に分けられます。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます(同条28号)。

 合併による解散は、消滅会社が解散とともに清算手続を経ないで直ちに消滅する点で、会社が事業活動を停止し、会社を清算する場合の原則的な清算手続による解散の場合と異なります。実務上は、新設合併の場合、事業について主務官庁の免許・許可の再取得や再度の株式の上場手続が必要となるため、対等合併であっても吸収合併の方法を選択することが多くなっています。

2.吸収合併の手続

(1)会社は、他の会社と合併をすることができますが、合併をする会社は、合併契約を締結しなければなりません(748条)。

(2)合併をする会社は、合併契約に関する書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(782条(会社規則182条)、794条(会社規則191条))。

(3)合併をする会社は、株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません(会社法783条1項、309条3項2号)。

① 存続会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法784条1項本文)。

② 消滅会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法796条1項本文)。

 ただし、消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続会社の譲渡制限株式である場合であって、存続会社が公開会社でない場合には、株主総会の決議を省略できません(同項ただし書)。 

 また、存続会社において、承継させる資産の額(簿価)が、分割会社の純資産額(会社規則187条)の5分の1以下(定款で厳格化することができます)の場合には、差損が生じる場合(796条2項ただし書、795条2項)を除いて、株主総会の決議が不要になります(会社法784条2項)。

(4)株式会社は、会社債権者異議手続の対象となる債権者がいる場合には、一定事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催促しなければなりません(789条2項、799条2項)。

(5)会社債権者異議手続が終了していないとき又は吸収合併を中止したときを除き、存続会社は合併契約で定められた合併の効力発生日(749条1項6号)に消滅会社の権利義務を承継します(750条1項、6項)。

(6)存続会社は、合併契約に関する事項を記載した書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(801条、会社規則200条)。

(7)会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併により存続する会社については変更の登記をしなければなりません(会社法921条)。

3.届出

 合併当事会社は、以下の届出が必要です。合併により被合併法人は消滅するため、被合併法人の届出書は、合併法人が提出します。

(1)法人等の異動(変更)届出書

 ① 合併法人

   届出書:異動事項「合併(新設・吸収・適格・その他)」に所要事項を記載する。

   提出先:合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所

 ② 被合併法人

   届出書:異動事項「解散」に合併により消滅と記載する。   

   提出先:被合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所 

(2)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

   提出先:被合併法人の所轄税務署  

(3)給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届

   提出先:被合併法人の異動従業員の1月1日現在の住所地の区役所・市役所   

(4)合併による法人の消滅届出書(被合併法人が消費税課税事業者であった場合)

   提出先 :被合併法人の所轄税務署

2021年

6月

10日

連結納税における合併と清算について

1.連結納税の合併と清算

 連結納税とは、親法人とその親法人による完全支配関係があるすべての子法人を一のグループとして、親法人がそのグループの所得(連結所得)の金額等を一の申告書(連結確定申告書)に記載して法人税の申告・納税を行う制度です。

 連結納税を採用している企業グループで、連結子法人を解散する場合において、合併する場合と清算する場合で会社法及び法人税法の取り扱いが異なります

2.会社法の解散事由

(1)通常の解散

 株式会社が、会社法471条(解散の事由)第1号、第2号及び第3号に規定する事由により解散する場合においては解散の登記の完了をもって解散し、同時に清算手続に入り、清算の結了によって消滅することになります(476条)。解散の登記は、解散する株式会社の第三者に対する対抗要件であるとともに、その解散自体についての要件です。

(2)合併による解散

 株式会社が、会社法471条第4号に規定する事由により解散する場合においては、合併によって消滅する株式会社の権利義務は、合併後存続する株式会社又は合併により設立される株式会社に包括承継され、清算行為を必要としないものですから、合併によって消滅する組合は解散登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります。

(3)破産手続開始の決定による解散

 株式会社が、会社法471条第5号に規定する事由により解散する場合においては、破産手続開始の決定により裁判所の監督下に入ることとなり、破産手続により破産管財人によって残務が処理され、清算行為を必要としないものですから、当該株式会社は解散及び破産終結の嘱託登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります(破産法35条)。

3.法人税法(連結納税)の取り扱い

(1)みなし事業年度

 合併の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から合併の日の前日までの期間(法人税法14条1項10号)であり、最終事業年度は、合併の日の前日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 清算の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間(14条1項10号)であり、最終事業年度は、残余財産の確定の日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 連結法人としての単体申告は、連結法人としての取扱いのうち一部が適用れます。

(2) 資産の移転

 合併の場合、100%親子間の合併は適格合併であるため、簿価による譲渡となります(2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)。

 清算の場合、資産の処分損益が益金・損金に算入されます。

(3)債務免除益

 合併の場合、債務免除益は計上されません

 清算の場合、債務免除益が益金に算入されます

(4)繰越欠損金

 合併の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

 清算の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

(5)特例欠損金

 清算の場合、会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入が認められます(法人税法81の3条、59条2項3項)。

(6)欠損金の繰戻還付

 どちらの場合でも、一部の例外を除いて連結欠損金及び単体欠損金の繰戻還付は適用できません(80条1項4項、81の31条1項4項)。 

2021年

5月

10日

連結子法人が合併により解散した場合の取り扱い

 連結親法人が連結子法人を吸収合併した場合には、その資産等の引き継ぎ等については、原則として単体納税における合併と同様の取り扱いを受け、通常は100%親子会社間合併のため適格要件を満たし(法人税法2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)、適格合併として処理されます(法人税法62の2条、67の7条1項)。 

 連結子法人の合併による解散があった場合には、その合併の日において、その連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4項)。

 また、連結子法人が連結事業年度の中途において合併により解散した場合には、みなし事業年度が生ずることとなり(14条1項9,10号)この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の2条1項2号)。

 したがって、当該連結子法人は合併した日の前日の属する連結事業年度開始の日から合併の日の前日までのみなし事業年度について、連結法人として単体申告を行うこととなります。なお、合併日の前日が連結事業年度終了日である場合には、合併日の前日までは連結事業年度となり、連結申告を行うことになります(15の2条1項かっこ書)。

 「連結法人としての単体申告」とは、連結納税の承認は有効であっても他の連結法人と申告の時期が異なることからその法人単体で申告することをいい、単体申告であっても連結法人としての取り扱いのうちの一部が適用されます。例えば、連結申告特有の所得の合算等は適用されませんが、連結納税グループ内の金銭債権に対する貸倒引当金の繰入は不可とする規定などは適用されることになります。

 最後事業年度に当該連結子法人に所得が発生した場合には、当該連結子法人の連結欠損金個別帰属額を単体納税の繰越欠損金とみなして繰越控除を行うことができますが(57条6項)、他の連結法人の連結欠損金個別帰属額を控除することはできません。また、連結子法人で最後事業年度に欠損が発生した場合には、その欠損金額を合併の日の属する連結事業年度において合併法人である連結親法人の損金に算入することができます(81の9条4項)。

 連結納税中に繰り延べた譲渡損益がある場合には、完全支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合を除き、それを計上しなければなりませんが(61の13条3項)、当該連結子法人が関税支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合には、譲渡損益は合併法人である連結親法人に引き継がれ、被合併法人である連結子法人において譲渡損益の戻し入れは行わず、合併法人において譲渡等が実現するまで繰り延べることになります(61の13条3項1号)。

 解散が合併又は破産手続開始の決定による解散ではない場合には、連結子法人の連結納税の承認が取り消されることはなく、また、みなし事業年度が生じないことから、連結親法人は、解散日を含む連結事業年度において、連結子法人の個別益金額又は個別損金額などを含めて連結確定申告を行うこととなります。連結子法人の残余財産の確定があった場合には、その残余財産の確定の日の翌日において、連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4号)。

 連結子法人の連結事業年度の中途において残余財産が確定した場合には、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間について、みなし事業年度が生ずることとなり(141条10号)、この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の21条2号)。

 連結子法人が吸収合併により消滅した場合、当該連結親法人は、「連結完全支配関係を有しなくなった旨を記載した書類」を遅滞なく、所轄税務署長に提出しなければなりません。