2020年
11月
10日
火
公益法人に個人が寄付をした場合の税金について
公益法人に個人が寄付をする場合には、生前の寄附、遺言による寄附、相続財産の寄附がありますが、その個人に対する税金については、以下の取り扱いがされています。
1.公益法人等に財産を寄附(贈与又は遺贈等)した場合
個人が、土地、建物などの財産(事業所得の基因となるものを除きます。)を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されます(所得税法59条①一)。これは、個人から法人に土地、建物などの財産が無償で移転するときに、個人に帰属する値上がり益に対する所得税を精算するための制度的要請によるものです。
ただし、土地、建物などの財産を公益法人等に寄附した場合に、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、この所得税について非課税とする制度(譲渡所得等の非課税の特例)が設けられています(租税特別措置法40条①)。
「寄附」とは、法人に対する贈与又は遺贈のほか、法人を設立するための財産の提供を
いいます。
この特例の対象となる「公益法人等」とは、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法
人(一般社団法人及び一般財団法人のうち法人税法に掲げる一定の要件を満たすものをい
います。)及びその他の公益を目的とする事業を行う法人(例えば、社会福祉法人、学校法
人、宗教法人や特定非営利活動法人など)をいいます。
上記の非課税の承認を受けようとする者は、寄附のあった日から4か月以内(その期間が経過する日前に、その寄附があった日の属する年分の所得税の確定申告書の提出期限が到来する場合には、その提出期限まで)に、一定の申請書を納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければなりません。
2.相続財産を公益法人等に寄附した場合
相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人又は認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例(国、地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附した場合の特例)があります。
この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。
(1)寄附した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。
相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
(2)相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
(3)寄附した先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人(以下「特定の公益法人」といいます。)又は認定非営利活動法人(認定NPO法人)であること。
3.公益法人等に寄附金を支出した場合
公益社団法人・公益財団法人は、全て特定公益増進法人となり、寄附金優遇措置の対象となります(所得税法78条②三、所得税法施行令217条三)。
(1)寄附金控除(所得控除)
個人が、国や地方公共団体、特定公益増進法人等に対し寄附金を支出したときは、それらの寄附金の額の合計額(所得金額の 40%が上限)から 2,000 円を控除した金額が寄附金控除として所得から控除されることとなります(所得税法78条①)。
(2)公益社団法人等寄附金特別控除(税額控除)
個人が、運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人等に対し寄附金を支出したときは、(1)との選択により、それらの寄附金の額の合計額(原則として所得金額の40%が上限)から2,000円を控除した金額の40%相当額(その年分の所得税額の25%が上限)が公益社団法人等寄附金特別控除としてその年分の所得税額から控除されることとなります(租税特別措置法41条の18の3①)。
2019年
8月
10日
土
公益法人の「他会計振替額」について
「他会計振替額」は「公益法人会計基準の運用指針」12.財務諸表の科目の取扱要領に「正味財産増減計算書内訳表に表示した収益事業等からの振替額」と定義付けされています。通常は収益事業等から公益目的事業会計への利益の 50 %又は 50 %超の繰入れに用いられる場合と収益事業等から法人会計に充てる場合に用いられます。これに加えて、公益法人においては、法人会計から公益目的事業会計への振替や収益事業等会計と法人会計間の振替も行うことができます。
他の会計区分における利益を振り替える会計区分間の取引が発生した場合、正味財産増減計算書内訳表上、「当期経常外増減額」と「当期一般正味財産増減額」の間に「他会計振替額」として表示します。「他会計振替額」は、基本的には利益ベースでの振替を会計区分間で行う場合に表示することが考えられており、収益事業等から生じる利益を公益目的事業会計に繰り入れる場合には、他会計振替額を用いることになります。
また、収益事業等会計で発生した利益を管理費の財源に充当する場合にも、他会計振替額を用いて財源を振り替えることとなります。ここで、「他会計振替額」は会計区分間の資産及び負債の移動(内部貸借取引を除く)を意味しており、収益・費用の按分を処理する科目ではありません。したがって、会費収入など法人内のルールにより、会計区分への配賦の基準が決まっている場合には、振替ではなく、直接各会計の経常収益区分に計上することとなります。
なお、公益法人認定法第 18 条の規定により、公益目的事業会計から収益事業等会計又は法人会計への振替はできないのに対して、一般社団法人及び一般財団法人については各会計間の振替は可能になっています。
法人会計から公益目的事業会計への振替は、公益法人認定法施行規則第 26条第 8 号に定められる定款又は社員総会若しくは評議員会において、公益目的事業のために使用し、又は処分する旨を定めた額に相当する財産として振り替えることになります。
他会計振替の考え方、振替額の計算方法、計算事例等については、日本公認会計士協会から公表されている「非営利法人委員会研究資料第4号」に記載があります。
2019年
5月
10日
金
公益法人の収支相償について
公益法人の収支相償とは、公益目的事業に係る収入は費用を上回ってはならないという基準のことです。公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないという基準は、公益目的事業は不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものであり、無償又は低廉な価格設定などによって受益者の範囲を可能な限り拡大することが求められることから設けられたものであり、公益法人が税制優遇を受ける前提となる基準です。
一方で、事業は年度により収支に変動があり、また長期的な視野に立って行う必要があることから、本基準に基づいて単年度で必ず収支が均衡することまで求められているわけではありません。仮にある事業において収入が費用を上回った場合には、将来の当該事業の拡充等に充てるための特定費用準備資金への積立てをもって費用とみなすこと等によって、中長期では収支が均衡することが確認されれば、本基準は充たすものされています。
なお、公益法人が財政基盤を拡大する手法としては、寄附金を募集することが第一に想定されますが、金融資産の運用によって事業を行う公益法人が、事業の拡大をするために、公益目的保有財産として金融資産を取得することも考えられます。
また、例えば、剰余金が出ることを前提とした事業計画(予算)を立て、事業計画どおり剰余金が出た場合、年度の前半に多額の剰余金が出ることが客観的に明白であったにもかかわらず、何ら対応を採らないような場合など、意図的又は法人運営上の認識不足によって多額の剰余金が出たような場合は別として、ある年度において剰余金が生じたことのみをもって、「勧告」を受けたり、公益認定を取り消されたりすることはありません。ただし、剰余金が生じた理由、解消方策等について確認するため、報告を求められること等はあり得ます。
このように公益目的事業に係る収入は費用を上回ってはならないという基準を前提にすれば、短期的には収支がゼロか損失を計上しなければなりませんが、中長期的な視野に立って収支相償を図ることにより、公益目的事業を継続的に実施することができるようになっています。
(公益法人認定法第5条第6号及び第14条)
(公益法人認定法第2条第4号)
(公益法人認定法施行規則第18条)
2016年
5月
10日
火
社団法人・財団法人の地方税(不動産取得税・固定資産税・都市計画税)
不動産取得税は、不動産の取得に対して、その不動産所在の道府県において、固定資産税は、土地、家屋、償却資産の固定資産の所有者に対して、その資産所在の市町村が課す税であり、都市計画税は市町村が都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、市街化区域内に所在する土地及び家屋に対して課される税です。
固定資産税は、納税通知書により、普通年4回(4・7・12月及び翌年2月)に分けて納付します。免税点は、土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円です。
この不動産取得税・固定資産税及び都市計画税はほぼ同じ取り扱いであり、公益社団法人・公益財団法人が設置する幼稚園、図書館、博物館、学術の研究の用に供する不動産等は非課税とされています。これら以外の施設については、課税の対象になります。
なお、一般社団法人・一般財団法人については、非課税の取り扱いはありません。
2016年
4月
10日
日
社団法人・財団法人の地方税(法人住民税及び法人事業税)
一般社団・財団法人、公益社団・財団法人の課税関係は以下のとおりです。(下図:東京都ホームページより)
法人税法に掲げられる公益法人等については、収益事業を行わない限り事業税及び法人税割は非課税となっていますが、地方税法により住民税が非課税となっているものを除き、収益事業を行わない場合であっても均等割は課税されます。その場合、毎年4月1日から3月31日までの期間についての均等割を、4月30日までに申告納付します。
なお、東京都では、収益事業を行わない特定の公益法人等について条例により、都民税均等割の免除を行っています。免除の対象となるのは、公益財団法人、公益社団法人、NPO法人、管理組合法人、団地管理組合法人、マンション建替組合、マンション敷地売却組合等です。
均等割の免除申請を行う法人は、毎年4月30日までに均等割申告書とあわせて、均等割免除申請書を所管の都税事務所に提出する必要があります。また、公益財団法人、公益社団法人及び特例民法法人の場合は、最近の会計報告書および事業内容に関する資料を添付しなければなりません。
2016年
3月
10日
木
社団法人・財団法人の印紙税
印紙税は、日常の取引に関連して作成される文書について、別表第一「課税物件表」に掲げたものに対して課税される税であり、公益法人等にとって以下のような取り扱いになっています。
1⑴.公益社団法人・公益財団法人が作成する金銭又は有価証券の受取書
公益社団法人・公益財団法人は、公益目的事業を行うことを主たる目的とし、営利を目的とする法人ではないことから、その作成する金銭又は有価証券の受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しない受取書に該当し、非課税となります。
(印紙税法別表第一 課税物件表第17号文書非課税物件欄2)
1⑵.一般社団法人・一般財団法人が作成する金銭又は有価証券の受取書
印紙税法においては、会社(株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社)以外の法人のうち、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができないものは営業者に該当しないこととされています。
したがって、この要件に該当する一般社団法人・一般財団法人が作成する金銭又は有価証券の受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しない受取書に該当し、非課税となります。
(印紙税法別表第一 課税物件表第17号文書非課税物件欄2かっこ書)
2.一般社団法人・一般財団法人が作成する定款
印紙税法において課税対象としている定款は、会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社又は相互会社)の設立のときに作成する定款の原本に限られています。
したがって、一般社団法人・一般財団法人が作成する定款については、印紙税の課税対象となりません。
(印紙税法別表第一 課税物件表第6号文書、印紙税法基本通達別表第一 第6号文書の1)
2016年
2月
10日
水
損益計算書等の提出
公益法人等(年間の収入金額が8千万円以下の法人及び収益事業を行っていることにより確定申告書を提出している法人を除く)は、損益計算書又は収支計算書を事業年度終了の日の翌日から4月以内に所轄税務署長へ提出しなければなりません。
損益計算書を提出しなければならない法人は、法人税法が公益法人等と定めたものですから、公益社団法人・公益財団法人、非営利型の一般社団法人・一般財団法人がこの制度の適用対象となります。
法人税法では、「別表第二」において法人税法における公益法人等を規定しており、これらの公益法人等が収益事業を営む場合は、法人税の納付義務があるとして確定申告書を所轄税務署長へ提出するものとしています。この確定申告書には、収益事業と収益事業以外の事業に係る損益計算書等を添付することになっていますが、公益法人等が収益事業を営んでいない場合は、確定申告書の提出は不要です。しかし、課税の適正化を図る目的から、収益事業を営んでいない公益法人等についても損益計算書等の提出義務を負わせています。
2016年
1月
10日
日
社団法人・財団法人に対する寄付金制度(所得税編)
個人が特定寄附金を支出した場合には、その支出した年分の所得税の確定申告の際に、寄付金控除(所得控除)又は税額控除の規定の適用(選択適用)を受けることができます。
所得控除は、寄付金額(所得金額の40%が限度)-2,000円であり、税額控除は、{寄付金額(所得金額の40%が限度)-2,000円}×40%(所得金額の25%が限度)です。
ここで、特定寄附金とは、①国、地方公共団体に対する寄付金(ふるさと納税など)、②公益法人等に対する寄付金のうち財務大臣が指定したもの(指定寄附金)、③特定公益増進法人(日本学生支援機構、日本赤十字社、社会福祉法人、学校法人など)に対する寄付金などのことをいいます。
また、個人が土地や建物といった財産を法人に寄附(贈与)した場合には、所得税法上、無償の取引であっても、当該資産は、原則として時価により譲渡されたものとみなして、寄付者に対して所得税が課税されることになります。これをみなし譲渡課税といいます。
しかし、個人が公益法人に対してする財産の寄付にまでみなし課税を行うことは、民間公益事業の保護育成の見地からも妥当ではありません。そこで、公益法人に対する財団の寄付については、一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものに限り、みなし譲渡課税を行わないこととする特例が設けられています。
2015年
12月
10日
木
社団法人・財団法人に対する寄附金制度(法人税編)
寄附金は何の見返りも期待しない任意の支出です。法人が寄附金を支出した場合には、企業会計上必要な経費として取り扱われます。しかし、寄附金は反対給付を伴わない支出であり、事業関連性に乏しいなど、その損金性が不明であるなどの理由から、法人税法においては、寄附金の損金算入について一定の限度額を設けており、この限度額を超える寄附金については損金不算入としています。
ただし、法人税法では、寄附金は①指定寄附金等(国・地方公共団体等)、②特定公益増進法人等(公益社団法人・公益財団法人等)に対する寄付金、③その他の寄附金の3つの区分に分類され、①と②の寄附金については公共性・公益性が高いため、別途損金算入できる措置が置かれています。
実務上は、期中において寄附をする際に公共性・公益性が高い寄附金か否か、多額の寄付の場合には損金不算入額が生じないかどうかを確認する必要があります。
なお、一般社団法人・一般財団法人に対する寄附は③その他の寄附金として取り扱われますので、別途損金算入される措置はありません。
2015年
11月
10日
火
社団法人・財団法人が受け取る利息・配当の源泉徴収
法人に支払われる利息や配当については、その支払いの際に源泉徴収がなされ、源泉所得税控除後の手取り額が法人に支払われるのが通常です。これらの利息等は法人の益金を構成し、その利息等から源泉徴収される所得税は法人税の前払いとしての性格を有しているため、法人税の申告・納付の際には控除されることになります。
ただし、公益社団法人・公益財団法人は、所得税法の別表第一に掲げられる公共法人等に該当するため、利子や配当について所得税は非課税とされ、源泉徴収されることはありません。ここで、収益事業であるか収益事業以外の事業であるかという点は問題にはなりません。
なお、一般社団法人・一般財団法人は、法人税法上の非営利型法人であるか否かに関わらず、別表第一に掲げる公共法人等には該当しないため、原則通り源泉徴収されることになります。
2015年
10月
10日
土
社団法人・財団法人の消費税
公益法人や非営利型法人でも、基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1千万円を超える場合には、普通法人と同様に消費税の課税事業者になります。
ただし、これらの法人は、補助金、交付金、寄付金等の収入の割合が高いことから、この対価性のない収入を原資として課税仕入れを行ったものまで仕入税額控除の対象にすると本来納付すべき消費税より実際に納付する消費税が過少になってしまいます。
そこで、公益法人を含む社団法人や財団法人については、通常の方法により計算される仕入税額控除について調整を行い、補助金等の対価性のない収入(特定収入)により賄われる課税仕入れ等に係る税額について、仕入税額控除の対象から除外することとしています。
2015年
9月
10日
木
社団法人・財団法人の法人税
法人税の納税義務がある法人(収益事業を実施している公益法人等)については、原則として、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を納税地の所轄税務署長に対して提出するとともに、法人税を納付しなければなりません。
公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人は、収益事業を実施していない場合には、原則的には、確定申告義務はありません。ただし、年間の収入金額の合計額が8千万円以下の場合を除き、原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内に、その事業年度の損益計算書または収支計算書を、主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないことに注意が必要です。