日米租税条約の適用・解釈について

 日米租税条約とは、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」のことをいいます。条約とは、文書による国家間の合意であり、日本国憲法が国際協調主義(98条2項)を建前としていることから、条約は法律に優位することになります。

 日本の憲法は73条3号ただし書、61条で国会の承認を条約の成立要件に加えており、7条8号の批准も行われていることから、国内的にも国際的にも下記のとおり条約の効力は有効になっています。

  • 平成15年11月6日 ワシントンで署名
  • 平成16年3月19日 国会承認
  • 平成16年3月30日 東京での批准書の交換
  • 平成16年3月30日 公布及び告示(条約第2号及び外務省告示第113号)
  • 平成16年3月30日 効力発生

 以上のことから、租税条約の各規定は国内税法に優先して適用されることが原則とされています。租税条約には、国内税法と異なる所得区分を定め、独自の源泉地規定を設定したり、条約では特別に規定されていないものもあります。

 よって、国内税法に加えて租税条約の各規定の検討が非常に重要になってきます。条約の文言が一般的・抽象的であって、個別的・具体的な適用・解釈が不明確な場合には、財務省・国税庁から公表されている各種ガイダンス・租税条約届出書様式等を参考にして条約の文言上の解釈を明らかにしていくことになります。

 また、この条約は原則としてOECDモデル租税条約を基調としていることから、同条約についてのコメンタリーも解釈の参考となりますし、租税条約は相手国との相互関係に基づくものですから、米国財務省(Department of Treasury)の公式指針等も同様です。

 なお、日本では租税条約を実施するため、関連法令として下記のとおり法律、政令、省令が整備されています。

  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(条約実施特例法)
  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令(条約実施特例法施行令
  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令(条約実施特例法省令