2021年

12月

10日

不動産鑑定評価に基づく相続税の申告について

 財産の評価については、その財産の取得価額による原価主義と、その課税時期における時価による時価主義の二つの方法が考えられますが、相続税法では、時価主義を基本原則としています(22条)。

 これは、相続税や贈与税のような財産課税にあっては、相続や贈与などにより取得した財産を、その取得時の時価により評価することが、納税者の側からみて最も共通的な判断基準として受け入れることができるし、評価基準としても最も一般性、普遍性を持つ尺度として考えられることによるものです。 

 同条は、相続により取得した財産の価額につき、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を定めているところ、ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解され、課税実務上は、「財産評価基本通達」(評価通達)に基づいて評価することとされています。 

 では、土地を相続した納税者が評価通達の定める評価方法よりも価額が低い不動産鑑定評価(鑑定評価)により相続税の申告をすることはできないのでしょうか。時価評価における評価通達と鑑定評価の位置付けが問題となります。

 まず、相続税法は、財産の評価方法を評価通達に委任する旨の規定はなく、財産の価額は、原則として当該財産の取得の時における「時価」によらなければなりません(同条)。

 そして、不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することです。この鑑定評価額は、財産の取得における客観的な交換価値として「時価」を表示しているといえ、その評価額で申告することは可能であるように思えます。

 しかし、相続財産の客観的な交換価値(時価)を画一的な評価方式によることなく個別事案ごとに評価することにすると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった金額が相続財産の「時価」として導かれる結果が生ずることを避け難く、また、課税庁の事務負担が過重なものとなり、課税事務の効率的な処理が困難となるおそれもあることから、相続財産の価額をあらかじめ定められた評価方式によって画一的に評価することは合理的なものであると考えられます。

 さらに、同通達の定める評価方式が形式的に全ての納税者に係る相続財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には租税負担の実質的な公平を実現することができるものと解され、同条の規定もいわゆる租税法の基本原則の 1 つである租税平等主義を当然の前提としているものと考えられることに鑑みれば、特段の事情があるときを除き、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ同通達の定める評価方式以外の評価方式によってその価額を評価することは、たとえその評価方式によって算定された金額がそれ自体では同条の定める時価として許容範囲内にあるといい得るものであったとしても、租税平等主義に反するものとして許されないものというべきです。

 したがって、その不動産に適用される評価通達の定める評価方法が客観的な交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有しないこと又はその評価方法によっては客観的な交換価値を適切に算定することができない特段の事情がない限り、通達評価額よりも価格が低い鑑定評価額が存在することのみをもって、鑑定評価額に基づく相続税の申告をすることはできないことになります。

2020年

10月

10日

相続人と法定相続分について

 相続とは、自然人の財産法上の地位(又は権利義務)を、その者の死後に、法律及び死亡者の最終意思の効果として、特定の者に承継させることです。被相続人とは、相続の開始によって承継される財産的地位の従来の主体であり、相続人とは、法律によって被相続人の財産法上の地位を承継するものをいいます。

 相続人の範囲や法定相続分は、民法で次のとおり定められています。

1.相続人の範囲

死亡した人の配偶者は常に相続人となり(890条前段)、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

<第1順位> 死亡した人の子供とその代襲相続人(887条)

 その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります(代襲相続)。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

<第2順位> 死亡した人の直系尊属(889条1項1号)

 直系尊属とは、死亡した人の父母や祖父母などのことです。父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

<第3順位> 死亡した人の兄弟姉妹とその代襲相続人(889条1項2号、2項)

 その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

 なお、兄弟姉妹については、代襲相続はその子に限られ、再代襲相続は認められておりません(889条2項、887条2項)

 相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません 

2.法定相続分

 法定相続分とは、被相続人による相続分の指定がない場合に、法律の規定によって定まる相続分をいいます。相続分の指定がない場合には、各相続人の相続分は民法の定めたところ、すなわち法定相続分によります(900条、901条)。

 ⑴ 配偶者と子供が相続人である場合

   配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2

 ⑵ 配偶者と直系尊属が相続人である場合

   配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

 ⑶ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

   配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

 子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。

 また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

2018年

12月

10日

遺言でできることとできないこと

 遺言は、故人の最終的な意思表示であり相続開始と同時に効力が生じます。遺言による相続分の指定は法定相続分に優先します。ただし、最終的な意思とはいえ、遺言では認められないこともあります。また、法定相続に優先する効力を認め、その効力が発生するときには遺言を残した人が亡くなられているため、故人の意思であることを明確にする厳格な方式が定められています。

 

1.遺言でできること

 遺言でできることは、主に相続人に関すること、相続分に関すること、遺産分割に関すること等です。ただし、法定相続人全員が合意し、遺産分割協議をし直せば、遺言に従わなくてもかまいません。

 ① 相続分の指定

 ② 遺産分割方法の指定・遺産分割の禁止

 ③ 遺贈・信託

 ④ 遺言執行者の指定

 ⑤ 相続人廃除の意思表示・相続人廃除の取消の意思表示

 ⑥ 認知・後見人の指定

 2.遺言でできないこと

 ① 相続人の指定

 ② 結婚・離婚(双方の合意が必要であるため)

 ③ 養子縁組・養子縁組の解消

 ④ 遺体解剖・臓器移植

 

 一般的な遺言は、公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。公正証書遺言以外は、遺言者が作成するため、内容が不明確なものや書式が不備で遺言として認められない場合もあります。

 遺言を作成するときは、公正証書遺言が間違いがありません。公証役場で、公証人が作成するため、書式違反や内容が不明で無効になることがなく、自筆証書遺言や秘密証書遺言のように家庭裁判所の検認手続きを受ける必要がありません。

 遺言書を発見した者、保存を依頼された者は、相続開始を知ったら遺言書を開封しないで家庭裁判所に提出します。家庭裁判所は、相続人やその代理人立会いの下に開封し、遺言書の方式や内容を調査し検認調書を作成します。遺言書の保存を確実にし、改変を防止するためです。

 検認手続きを受けずに遺言書を開封しても、遺言が無効になるわけではありませんが、トラブルを避けるためにも必ず検認手続きを受けることをおすすめします。また、検認手続きを受けていない遺言書で不動産等の名義変更をすることはできません。

2018年

11月

10日

不動産登記の概要について

 不動産登記制度とは、不動産登記法第1条にあるように不動産の表題及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度のことであり、この制度により、国民の権利の保全を図り、取引の安全と円滑に資することを目的としています。

 不動産に関する登記は、不動産の表示に関する登記と不動産の権利(所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権及び採石権の9種の権利)に関する登記の2種に大別されます(不動産登記法第3条)。

 この両者の登記は、それぞれ別個独立にされるものであり、前者の不動産の表題に関する登記は、不動産の権利の客体とされる土地及び建物の状況を明確にするための登記として、また、後者の不動産の権利に関する登記は、その権利を第三者に対抗(民法第177条)するための登記としてされるものです。

 登記所において保管する不動産の状況等を公示する公証資料には、土地及び建物の登記事項証明書をはじめ、地図(地図に準ずる図面)、建物所在図、各種図面、閉鎖登記簿、その他の各種諸帳簿等があり、それぞれ分担する役割の下に、不動産の同一性の識別とその状況等を広く提供しています。

 登記記録は、不動産の同一性の識別とその状況及び不動産に関する権利の内容を明らかにする公証資料であり、不動産に関する登記記録は、1筆の土地又は1個の建物ごとに作成されるものです。

 不動産登記法第14条は、「登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする」としており、土地登記記録では、その表題部により土地一筆ごとの地番・地目・地積が明らかにされています。しかしながら、それらの情報だけでは、実際にその土地がどこに位置し、どういう形状をしているかということは判断できません。そこで、登記所に地図を備えることによりそのことを明らかにしようとしています。

2018年

10月

10日

不動産鑑定士について

 税理士や弁護士と比較して不動産鑑定士についてよく知っている人はあまりいないのではないでしょうか。

 不動産鑑定士は、地域の環境や社会情勢など諸条件を考慮して適正な地価等を判断する唯一の資格者であり、また豊富な実務経験と知識を活かして、取引事例の調査・分析及び物件調査· 市場価格などの隣接業務のほか、団体や個人を対象に不動産の利用に関するコンサルティングなどの周辺業務も行っています。

 定期的な鑑定評価のひとつとして、国や都道府県が行う「地価公示」や「都道府県地価調査」「相続税標準地・固定資産税標準宅地の評価」があります。そのほかにも公共用地の取得や裁判上の評価、(不動産を証券化する際の)資産評価なども行っています。
 不動産の取引価格水準や地代家賃等水準の把握、または不動産売買及び担保価値の把握のための調査・分析のほか、不動産投資や処分の判断資料となる調査・分析なども行います。
不動産のエキスパートとして広く個人や企業を対象に、不動産の有効活用、開発計画の策定をはじめとする総合的なアドバ イスを行っています。

 具体的には以下のようなケースにおいて不動産鑑定士が活用されています。

1.不動産を賃貸借するとき
 ビルやマンションなどの家賃の決定には、貸手も借手も納得のいく賃料にすることが必要です。このような家賃のほか、地代、 契約更新料、名義書替料なども鑑定評価の対象です。また、借地権、借家権価格と財産価値判定の根拠としても鑑定評価は役立ちます。
2.相続などで適正な価格が必要なとき
 財産相続で一番問題となるのが土地・建物など、不動産の分配です。鑑定評価を受ければ、適正な価格が把握でき、公平な相続財産の分割をすることができます 。
3.不動産を売買・交換するとき
 「思いどおりの値がつけば手放したい」と思っているときなど、まず、所有する不動産の適正な価格を知っておく必要があります。また不動産を買うとき、交換するときにも、鑑定評価をしておけば、安心して取引をすすめられます。
4.不動産を担保にするとき
 所有する不動産を担保に、事業資金などを借りるとき鑑定評価書があれば、借りられる金額の予測がつくなど便利です。逆に担保を設定するときは、評価額がはっきりしていることが重要です。また、不動産を証券化する場合、不動産鑑定評価書が必要となります。
5.資産評価をするとき
 土地・建物の評価替えをするとき、あるいは現在の資産価格を知りたいとき、鑑定評価が必要となります。不動産の価格は流動的なものだけに、常にそのときどきの価格を把握しておくことが大切です。
6.共同ビルの権利調整や再開発関連の場合
 共同ビルの権利調整や再開発関連の場合は、権利関係が複雑で煩雑なものです。複雑なものをスッキリさせ、無用なトラブルを防ぐためにも、客観的で公平な鑑定評価が必要です。

2018年

9月

10日

財産評価(課税価格)について

 相続、遺贈または贈与が発生した場合において、相続税や贈与税を計算するためには取得した財産の価値、つまり課税価格を把握しなければなりません。この課税価格の計算に当たっては、取得した財産をいくらに見積もるかという「財産の評価」が必要になります。

 相続税法では、財産の評価に関しては、地上権、永小作権、定期金に関する権利等の財産についてはその評価方法が規定されていますが、その他の財産については「時価」により評価する(相続税法第22条)旨だけが規定され、「時価」の内容は財産評価基本通達を含んだ法律の解釈に委ねられています。

 ただし、財産評価基本通達は法律ではなく、あくまでも時価の算定方法の指針を示したものにすぎません。したがって、財産評価基本通達は基本的な計算方法である一方、これ以外の評価方法も認められる可能性が高いということがいえます。

 ここで重要なのは、上記の「これ以外の評価方法」とは何かが問題となることでです。これは、不動産であれば、一般的に不動産鑑定評価を指すため、ここに財産評価において税理士が鑑定評価の活用方法を理解しなければならない必然性があります。

 不動産の鑑定評価に関する法律において、不動産鑑定評価とは、「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」と規定されています。

 また、不動産鑑定士が準拠すべき不動産鑑定評価の実務指針である不動産鑑定評価基準では、不動産の鑑定評価について、「不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである」とされ、さらに、「これらが有機的かつ総合的に発揮できる練達堪能な専門家によってなされるとき、初めて合理的であって、客観的に論証できるものとなる」と指摘しています。

 つまり、不動産の鑑定評価は不動産の経済価値を金銭に見積もる行為全般を指し、専門家である不動産鑑定士が行うことによりはじめて財産評価における評価方法として認められるものであるといえます。