青色申告特別控除について

 青色申告は、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる申告の制度で、青色申告をすることができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

 青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。

 青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その一つに所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2)があります。

1.55万円の青色申告特別控除

 この55万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。 

 不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額が55万円より少ない場合には、その合計額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額をいい、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算します。控除の順序は、不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除(同法基本通達25の2-1)します。

2.65万円の青色申告特別控除

 この65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)上記1の要件に該当していること

(2)次のいずれかに該当していること

① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること(電子帳簿保存法施行規則第3条第1項参照)。

② その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

3.10万円の青色申告特別控除

 この控除は、上記1及び2の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

4.留意点

 不動産所得を生ずべき業務が、事業的規模で行われていない場合には、1(2)の「事業」に該当しない(所得税法基本通達26-9)ため、55万円(65万円)の青色申告特別控除を適用することはできず、10万円の青色申告特別控除が適用されることになります。ただし、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業のいずれか一方があれば55万円(65万円)の控除を受けることができます(租税特別措置法25条の2第3項)。

 したがって、事業所得と不動産所得が両方ある場合には、不動産貸付けの規模にかかわらず、55万円(65万円)控除の要件を満たすことになります。

 なお、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいい、事業所得であれば1(2)の「事業」に該当することになります。

 また、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算しますので(同法基本通達25の2-1)、事業所得が赤字であっても。事業的規模に関わらず不動産所得から55万円(65万円)の控除を受けることができます。