海外赴任者の納税義務と納税管理人の選任(所得税)

 日本国内の会社に勤めている給与所得者(役員を除く)が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤し、または海外の子会社に出向すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。非居住者が国外勤務で得た給与には、原則として日本の所得税は課税されません。

 したがって、非居住者となる時までに日本国内で得た給与について源泉徴収された所得税を精算する必要があります。精算の方法は、毎年12月に行う年末調整と同じ方法です。この調整による精算は非居住者となる時までに会社で行います。

 また、非居住者の所得のうち、日本国内で発生した一定の所得については、引き続き日本の所得税が課税されます。例えば、国内にある貸家の賃貸料などの不動産所得が一定額以上あれば、毎年確定申告書を提出しなければなりません。

 このような場合には、非居住者の確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等、納税義務を果たすために納税管理人を定める必要があります。

 納税管理人を定めたときには、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。この届出書を提出した以後、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。したがって、納税管理人の住所地を所轄する税務署長に対し行うことはできません。なお、納税管理人は法人でも個人でも構いません。

(参考)国税庁タックスアンサーNo.1921, No.1923